日経平均の見通し

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

「見通しの改善が続くも、上値は重いか」

 今回調査における日経平均の見通しDIの結果は、1カ月先がプラス16.51、3カ月先はプラス6.87となり、ともに前回調査の結果(それぞれプラス3.81、マイナス0.48)から大きく改善しました。

 回答の内訳グラフで細かく見ていくと、弱気派の割合が1カ月先で17.37%(前回は24.05%)、3カ月先で24.24%(同29.63%)となっており、弱気派の減少が目立っています。前回調査から、さらにDIの改善傾向が続いた格好です。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 ちなみに、1カ月・3カ月ともにDIの値がプラスとなるのは、昨年(2020年)の9月調査以来になります。

 この時は翌10月の日経平均が弱含む展開となりました。さらにさかのぼって、昨年の5月や2019年10月、そして2018年9月も同様に、1カ月・3カ月のDIがともにプラスだったのですが、いずれも翌月の日経平均が下落しています。あくまでも過去のデータに限った話ではありますが、特に今回は調査後の株式市場が下げ足を早めただけに、少し不安を覚えてしまいます。

 今後の展開を想定する上で最大のポイントになるのは、日米ともに「下げ切らない強さ」を幾度となく見せてきたこれまでの相場を揺るがしたのが、新型コロナウイルスでも企業決算でもなく、米個人投資家による一部の投機的な取引と、それに伴う状況だったという点です。

 SNSなどを通じて連携した個人投資家が、空売り残高の多い銘柄に集団で買いを仕掛け、空売り残高を積み上げていたヘッジファンドに損失を発生させて圧力をかける手法によって、ターゲットとなった銘柄の株価が本来の実力とはかけ離れるほどに急上昇し、実際にヘッジファンドが損失を抱え、買い戻しや追加担保の確保に迫られる事態となっています。

 こうした事態は、一部の銘柄による局所的な動きであり、「相場への影響は一時的」という見方が多いようですが、さまざまな論点や問題、課題が浮き上がってきました。

 具体的には、個人集団がファンド勢に打ち勝ったという事例が発生したことで、市場のバランス・オブ・パワーに変化が生じ、これまでの投資手法が見直される可能性があることや、そもそも今回の個人投資家の行動が法令違反にあたるのか、個人の大量の注文によって証券会社の取引システムの障害が相次いで発生したことによる機会損失、個人投資家に対してネット証券が取引制限を実施する一方で、ファンド勢は通常通り取引できたことによる不公平感などです。

 さらに、損失を抱えたヘッジファンドが資金を確保するために他の銘柄を売却するなど、他の銘柄にも影響が出ているほか、投機的な値動きを敬遠する投資家の株式市場離れ、そして、こうした事態を生み出す遠因となった金融緩和自体に対する批判、今回の事象を契機に新たな取引規制が設けられるなども考えられ、思ったよりも影響が長引く可能性があります。

 いずれにしても、目先で反発する場面があったとしても、過熱感と今回の投機的な売買による混乱の記憶が結び付きやすくなり、そこから積極的に上値を追う展開になりにくくなってしまうことも考えられ、しばらくは神経質な値動きを意識しておく必要があるのかもしれません。