米国の国内政治が最大のリスク

 その中でも今年も第1位のリスクとして挙げられたのが米国の政治リスクです。

 昨年は、「誰が米国を統治するか」として米国の大統領選を巡るリスクを指摘していましたが、今年は、「第46代大統領」が政治リスクとして指摘しています。

 米大統領選挙で改めて浮き彫りとなった米国社会の分断が「今後も続く」と予測し、人口の半分が大統領選の結果を非合法と見なす深刻な分断によって政権運営や外交などにも影響を及ぼし続けると懸念を示しています。

 イアン・ブレマー氏は、バイデン氏については「国民のほぼ半数から非合法に選ばれた大統領だと見なされ続ける。ジミー・カーター氏以降で最も弱い大統領として就任する」との見方を示しています。

 2020年で失った900万人超の雇用はいまだ回復せず、また米国民の半分から支持を得られていない政治環境は、新大統領にとって前途多難の始まりかもしれません。

 4年後の米大統領選をにらみ、既にトランプたたき、トランプ封じ込めが始まっていますが、2年後の中間選挙も茨(いばら)の道となることも予想されます。民主党内の左派勢力との調整に難航し、分断と対立が残る国内問題に時間を割かれ、環境サミットなどを提唱していますが、名ばかりで実のない外交になるかもしれません。

新型コロナウイルスの影響の長期化

 2位の「新型コロナの影響の長期化」では、コロナワクチン接種だけでは「広範囲にわたる影響は消えない」とし、債務危機や金融危機の恐れもあると指摘しています。

 前回のコラムで、新型コロナの感染拡大、ワクチンの普及、経済の回復との関連についてお話ししました。ワクチン普及には時間がかかり、感染拡大を抑制するには至らず、景気の回復は鈍くなるとの予想を述べましたが、イアン・ブレマー氏も新型コロナが経済に与えたダメージが今年顕在化するリスクを指摘しています。そして、感染の拡大により世界で経済格差が広がり、回復ペースの違いによる二極化で社会不安が増大し、ポピュリスト(大衆迎合主義者)が支持を得る状況が生まれると警告しています。