新興国・資源

 新興国市場、資源相場には、既にドル安に伴う復調の動意が観察されています。この局面のドル安は、米国・世界経済が回復に向かう一方、FRBがまだ金融緩和を継続することで起こる現象です。もし米経済が悪化途上にあり、世界経済にも暗雲が漂う局面であれば、新興国・資源とも相場は苦境に陥ります。

 主要な新興国通貨では、アジアのインドネシアがいち早く回復し、次いでメキシコ、南アフリカが堅調です。コロナ感染が特にひどかったブラジル、政治が金融政策をゆがめて市場の信認を失ったトルコは低迷が長引きましたが、2020年11月以降のワクチン朗報とともに小反発。ただ、すんなり復調が進むかはまだ判然としません。2021年の新興国通貨の復調は、選別的に進む可能性が高いとみています。

図4:主要新興国通貨の推移 

出所:Refinitiv

 資源相場では、世界景気動向を映すとされる銅、景気と政治を両にらみする原油は、ワクチン朗報に伴う景気回復期待とドル軟化を受けて強含んでいます。

 金は、安全資産として先行き不安な時に堅調になる面と、リスク資産としてブル相場環境に堅調になる二面性があります。2021年は、好相場が想定される株式対比ではアンダーパフォームするものの、分散投資需要で堅調を保つとみています。

図5:原油・銅・金相場の推移

出所:Refinitiv

 2021年は、株式相場ではグロース系から景気・バリュー系まで、グローバルには新興国・資源まで、投資機会は面で広がると期待しています。一つ留意すべきは、新興国・資源は、外国株式以上の高リスク資産ということです。新興国は国家とはいえ脆弱(ぜいじゃく)性、不安定性があり、景気回復局面のドル安という他力本願の相場です。

 それでも、2021年は、2022年以降にマクロ・政策動向への懸念が徐々に顕在化するかもしれない状況の前段階にあって、投資家にとって素晴らしい好マクロ条件が見込まれます。この場面を活(い)かし、慎重に前向きに勝ちとっていただきたいと願っています。

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