グロース「全集中」から「領域展開」へ

 2020年から2021年年明けにかけての各市場の動きを確認しておきましょう。

株式

 図1は2020年初を基点にした米日主要株価指数の推移です。赤点線の囲いは、4~8月に生じた金融相場第1波、グロース株主導のコロナ相場です。米国ではグロース株を主とするナスダック総合指数が急伸し、景気・バリュー色の強いNYダウ平均株価がひどくアンダーパフォームしました。

図1:2020年グロース株主導の金融相場第1波

出所:Refinitiv

 図2は、この金融相場第1波の終息後の10月以降の代表的な米株価指数です。ローテーションへの警戒から、グロース系大型株が調整に入って動きが鈍った分、中小型株(ラッセル2000)が上伸する典型的な展開が見られました。

 他方、ローテーションで強まると期待された景気・バリュー系のダウ指数は、ワクチン開発の朗報が出た11月中下旬を除くと、必ずしもグロース対比で優勢ではありませんでした。12月にグロース系ナスダック指数が再び優位に立つと、中小型のラッセル指数にいち早く陰りが出ました。

 以上の一連の展開は、「トウシル」のレポートや動画で筆者がご案内してきた通りの典型的現象でした。この延長線上では、早晩ローテーションによるグロース反落への警戒は薄れ、グロース優位、景気・バリュー系も地味ながら堅調という好バランスの相場に移行するとみています。

図2:2020年ローテーション期の米主要株価指数

出所:Refinitiv

 この流れを、11月以降のローテーション場面の主要テーマ別株式ETF(上場投資信託)で確認しましょう(図3)。12月にかけては、グロース系と景気系の両性質を濃く持つ半導体が最上位、次いで景気系の素材、金融、資本財・サービスと続きました。ナスダック上位100銘柄やIT(情報技術)のグロース系は中庸(ちゅうよう)、ワクチン朗報で利益確定売りが強まったグロース系医療は低迷しています。

 ただし12月中に相場全般が年末休暇期でダレると、11月上伸組が修正反落気味になり、他方でグロース系の失地回復が進行し、医療に押し目買いの堅調さが出ています。1月中はまだ若干の紆余(うよ)曲折もあるでしょうが、2021年のマクロ環境が極めて良好と観測される中、グロース系優位、景気・バリュー系の地味に堅調というバランス感が、春に向けて醸成されるイメージを抱いています。

図3:2020年ローテーション期の米主要テーマ別株式ETF

出所:Refinitiv