スロースタートからどう走る?

 2021年は通年でマクロ投資の好環境と見ながらも、年明け早々のスタートは、ダッシュどころか、滑ってつまずくありさまでした。ただしスロースタートは想定の範囲です。予想というほど強い見立てではないものの、好相場に向かう流れについてイメージしてみましょう。

1月

 2021年年明けは、米上院の勢力決定選挙、米欧日の冬場の新型コロナ感染の猛威、それによる景気二番底リスクを前に、先行き楽観の投資家も気勢を削がれました。まして、米選挙で民主党優勢との報道が出ています。市場には、大統領と上下両院を民主党が制する「トリプルブルー」なら、財政積極化による長期金利上昇が株式相場、特にグロース株にマイナスに作用するという刷り込みがありました。しかし、ひとたび株高に転じれば、財政積極化は需要不足の景気の回復に必要でよいこと、株価にもプラスと、相場追認的な解釈になるでしょう。

2月

 1月下旬に米国でバイデン民主党政権が誕生し、施政方針が示されると、経済にも市場にも仕切り直しの高揚感が出やすいでしょう。この頃には、過去3カ月ほどのローテーション過程で特に下がらなかったグロース株の見直し買いが相場を再びリードする可能性があります。逆に、景気・バリュー・中小型などの株式はいったん調整されるかもしれません。

 ただし、2020年4~8月の金融相場第1波のようなグロース株一辺倒の相場ではもはやなく、景気回復期待に沿って、景気・バリュー株も底堅さを見せると想定します。

3月

 米欧日では、春に向けて気温が上がり、コロナ感染が落ち着いてくる可能性があります。ワクチン接種が進む安堵(ど)と重なって、「もう最悪期は過ぎたのではないか」という楽観ムードが相場を押し上げやすいと期待します。

4~6月

 3~5月分の米経済指標が強振れて、株式相場の強気も強化されるかもしれません。

 2020年3~5月の経済指標は空前の悪化となりました。米指標はほぼ全て季節変動を統計的に調整した後の値をメインに公表されます。これが、2020年の指標の激変動によってゆがむ可能性が排除されません。

 2008年9月のリーマン・ショックでは10~12月に劇的に指標が悪化。翌年から数年のこの期間の指標が強振れ、株高になるパターンがありました。逆に春先にかけて公表指標が弱振れて、株価も反落しがちとなり、季節調整値のゆがみが原因ではないかと臆測されました。

7~9月

 2020年6月以降の数カ月は、コロナ禍で停止を余儀なくされた経済活動が再開し、経済指標が過去最大級の反発を見せました。2021年の同期間の指標が、リーマン・ショック後の数年と同様に弱振れるなら、4~6月相場の加熱の反動が出る恐れがあります。

 また、4~6月に相場加熱と景気回復感が相まって高じると、財政金融政策の「出口論」、あるいは長期金利の先行的上昇が、株式相場の反落を誘うリスクも警戒されるでしょう。

 ただし、2021年中は、まだ経済が正常軌道に届かない需要不足の段階との想定です。当局が株式相場の大幅下落を受忍することはなく、市場を支える政策措置を講じるとみるのが妥当と判断します。マクロ環境という上昇気流は続く中、2021年中のリスクはエアポケット的なものにとどまるとみます。