<株式市場のテーマ>

9:第4次産業革命、水素エネルギーが株式市場の重要テーマに

 コロナ前から進み始めていた第4次産業革命が、コロナ後には加速する見込みです。AI(人工知能)・IoT(モノのインターネット化)・ビッグデータ分析・ロボットの普及により、ITを駆使した産業構造の革新が一段と加速する見込みです。株式市場では、引き続き、第4次産業革命が重要なテーマとなります。

 それとともに、重要なテーマとなりそうなのが、水素エネルギーです。欧州に続き、米国も日本も、脱「化石燃料」の政策シフトが進みそうです。その鍵を握るのが、水素エネルギーの活用です。

 電気エネルギーは保存や運搬がむずかしいという欠点があります。そのため、世界中で自然エネルギーから電気を作っても、大都市まで運んで有効に使う術がありません。その解決策の1つと考えられているのが、水素です。

 自然エネルギーで得た電気を使って水を電気分解し、水素を得ます。水素の形で、エネルギーを保管・流通させる方法が考えられています。水素を燃やして電気を得る方法を使えば、排出物は水だけです。水素を使った発電所や、水素で走る燃料電池車が注目されるようになってきました。

 自然エネルギーを使って作る水素を、グリーン水素と言います。将来、グリーン水素を大量に流通させる時代が来ると予想しています。ただし、2021年にいきなり大量のグリーン水素が作られるわけではありません。最初は、化石燃料由来の水素の活用から進むと思います。2021年は、製油所・製鉄所・油田などで副産物として出てくる水素の活用が進むと思います。そこで実績を作ってから、将来、グリーン水素の活用に進むことになると思います。

 水素ビジネスで企業が稼ぐ時代はまだ遠い先ですが、それでも2021年は、水素エネルギー関連株が折に触れて、物色されると予想しています。トヨタ自動車が12月に発表した燃料電池車、新型MIRAI(ミライ)への注目も高まると思います。

10:日本の上場企業へのTOBが大幅増、年60件を超える

 近年、日本の上場企業に対するTOB(株式公開買い付け)が増えています。2021年はさらに増えると考えています。2つのパターンがあります。

(1)完全子会社化:親会社が子会社に対してTOBを実施して子会社株をすべて取得し、完全子会社(親会社が100%所有する子会社)にする。
(2)業界再編:生き残りをかけた業界再編の一環として同業他社にTOBを実施する。

 最近の例では、NTT(9432)NTTドコモ(9437)に対してTOBを実施し、完全子会社化を目指していることが話題になっています。TOBは無事成立しました。

 今年5月には、ソニー(6758)が金融子会社であったソニーフィナンシャルHD(当時ソニーが発行済株式の60%を所有する上場子会社)に対してTOBを実施しました。TOBは成立し、ソニーフィナンシャルは完全子会社となり、上場廃止となりました。

 業界再編のTOBも増加しています。今年3月、昭和電工(4004)日立製作所(6501)の上場子会社であった日立化成に対してTOBを実施しました。日立化成は上場廃止となり、昭和電工の完全子会社となりました。日立製作所が、日立化成について、本業との関連が小さいと判断して親子関係を解消し、昭和電工に売却することを決めたためです。

 島忠(8184)に対して、同業のDCM HD(3050)がTOBをかけ、その後、同業のニトリHD(9843)がさらにそれを上回る価格でTOBをかけたのも、話題になりました。こうして、業界再編が進んでいきます。

 日立製作所(6501)は、過去に多数の上場子会社、あるいは、上場関連会社を保有していましたが、近年、急速に親子上場の解消を進めました。本業の一部と考える子会社にはTOBをかけて完全子会社にしました。2009年には、当時上場子会社であった、日立情報システムズ・日立ソフトウェアエンジニアリング・日立システムアンドサービス・日立プラントテクノロジー・日立マクセルの5社に対してTOBを実施し、完全子会社としました。

 一方、日立化成・日東電工(6988)のように本業との関連が薄いと考える子会社・関連会社は売却を進めました。総花経営とも言われる総合電機の多角化路線と決別し、競争力の高い事業に特化する「選択と集中」を進めるためです。
 親子上場を解消するTOBが増えていることに、3つの理由があります。

(1)少数株主との利益相反

 親会社の経営戦略にそって子会社を経営することが、子会社の少数株主(親会社以外の株主)の利益に反することもあります。たとえば、子会社に「親会社以外の会社と取引することを制限」したり、「短期的な利益を犠牲にして長期的な成長のための投資を進めさせること」が、子会社の少数株主の反発を招くことがあります。

 極端な例では、親子上場企業が、互いにライバルとなる例すらありました。かつて親子上場だった、積水化学(4204)積水ハウス(1928)などがその例です。住宅事業で、親子が激しく競合する不思議な関係となっていました。今は、親子関係を解消しています。

(2)重要子会社の経営判断の遅れ

 少数株主の意見も尊重しなければならないため、親会社が望む経営戦略が進めにくくなることがあります。本業にとって重要な会社は、TOBをかけて完全子会社とするのは、時代の流れです。

(3)利益の一部(少数株主持分)が外部流出

 上場子会社が高収益会社の場合、親会社は100%保有した方が連結利益を高めることができます。子会社の一部を少数株主に保有させてしまうと、その分、連結利益が低下することになります。

こうした背景から、2021年はTOBがさらに増加すると予想しています。