<2021年1~3月の予測>
2021年1~3月は、世界的に株が反落すると予想します。2020年11~12月に「バイデン・ワクチン期待」で世界株高が進みましたが。1~3月はその反動が出ると予想します。
米大統領選でバイデン氏の勝利が確実になってから、株式市場はバイデン氏の発言に反応して動くようになりました。ただし、2020年11~12月の世界株高に含まれている「バイデン期待」には、バイデン政策「いいとこ取り」の面があります。1月にバイデン政権が始動、予算教書で政策方針を示すと、株式市場にとってネガティブな面も見えてくると思います。
11~12月のワクチン期待も、やや早計なところがあります。2021年後半にかけて、ワクチン効果で経済が正常化する期待が高まっていますが、1~3月はまだワクチンで恩恵を受けられる人は一部に限られます。1~3月はコロナの感染拡大が止まらず世界が苦しむ時期となりそうです。
以下、1~3月に起こると考える「10大予測」の2番目から5番目までについて、私の予測を解説します。
2:バイデン政権下でも米中対立は深まる
民主党バイデン氏が、トランプ政権の「米国第一主義」を修正し、国際協調路線に回帰する方針を示していることから、米中対立が緩和する期待を生じています。ただし、それは甘い夢かもしれません。
私は、米中対立は、これから50年続く「米中冷戦」に発展すると考えています。米中対立は根が深すぎて、抜本的な解決策がありません。貿易戦争から始まり、ハイテク覇権争い、アジア・太平洋圏での勢力争いにも発展しています。政治体制をめぐる対立も解決策がありません。米国は、中国の「国家資本主義」を批判しています。国の補助を得た中国企業が半導体・液晶・スマートフォン・車載電池・5Gなど世界の有望市場で次々とトップシェアを取っていく戦略です。中国は、成長の根幹にかかわる「国家資本主義」を、米国に批判されたからといって、やめるつもりはありません。
貿易戦争も、泥沼に落ちる可能性があります。中国企業は、歴史的な流れからすると、そろそろ自国からの輸出を抑え、米国での現地生産をどんどん立ち上げていかなければならない段階に入っています。ところが、米国との関係をここまで悪化させてしまうと、中国企業が米国でどんどん現地生産を立ち上げるのは困難になりつつあります。
日本は、1980年代に米国と苛烈な貿易戦争を体験しました。その後、日本企業はどんどん米国での現地生産を立ち上げました。その結果、日米の貿易戦争は、影を潜めました。中国企業は、日本と同じように米国での現地生産を増やそうとしても、政治的な対立でできなくなっています。
バイデン政権が始動してすぐに、解決できない米中対立がクローズアップされてくる可能性があります。
3:バイデン政権、法人増税の準備を始める
バイデン政権は、大型公共投資を実施するための財源として、法人増税を明言しています。ただし、株式市場では、いいとこ取りの期待が広がっています。コロナが猛威をふるう中、大型景気対策はすぐに実行するが、法人増税はコロナが収束するまで先延べするという期待です。
バイデン政権が始動すれば、実際に、大型公共投資を含むコロナ対策の財政出動はすぐに実施されると思います。ただし、それと同時に、法人増税の準備にもすぐに取り掛かると思います。法人増税の話が現実的になると、株式市場はネガティブに反応する可能性があります。
4:コロナが猛威ふるう中、ワクチン有効のデータ増える
1~3月は、コロナ克服への期待と感染爆発への不安の綱引きが続きそうです。欧米で、米ファイザー、米モデルナ、英アストラゼネカなどのワクチン利用が始まり、有効性を示すデータが増えてくると予想しています。ただし、ワクチン投与は医療関係者や高齢者、基礎疾患のある人に最初は限られそうです。広く一般までワクチンが行き渡るには時間がかかります。1~3月は経済活動を続けることにより、感染拡大が続く可能性があります。また、英国などで広まったコロナ変異株への不安も続きます。
5:円高、一時1ドル98円まで進む
FRB(米連邦準備制度理事会)が、金融緩和の長期化を示唆していること、コロナ収束が見通せないことから、1~3月はドル安(円高)が進むと考えます。1ドル100円を割れ、一時98円をつけると予想しています。ただし、そこが円高のピークで、世界景気が回復するにしたがって、年後半は1ドル100~105円に戻ると予想しています。