4:日本株市場が米国株をアウトパフォームするか

 2020年と同様に、米国株次第の状況が続くため、米株高につれて2021年前半には日経平均株価は3万円の大台をうかがう可能性がある。ただ、米国において株高のけん引役がGAFAMなどから幅広い銘柄にシフトする中で、同様に国際的に出遅れていた日本株の上昇余地が大きいとの見方があるが、日本株が米国株をアウトパフォームする可能性は低いとみる。デフレリスクに再び直面している日本では本来、大規模な経済安定化政策が必要だが、実際にはこれが不十分なものにとどまり、外国人投資家の日本株への期待が高まる可能性は低いだろう。

5:菅政権の政権基盤が揺らぎ政治情勢が不透明に?

 久々の平民宰相として菅政権は極めて高い支持で始動した。デジタル庁創設、規制改革、携帯電話の料金引き下げ、などの政策を、政治主導で官僚組織を動かし実現を目指している。一方で、GoToトラベルは経済的なダメージをうけた産業や中小企業を支援する政策だが、新型コロナウイルス感染抑制とのバランスに苦慮。また、医療体制の拡充や経済支援策などの財政政策をしっかりと実現する必要があるが、これらの対応が不十分にとどまるリスクがある。メインシナリオではないが、経済の停滞を長引かせて国民の支持を得ることに失敗、盤石にみられた菅政権の政権基盤が弱まるリスクがある。総選挙が行われる中で日本の政治情勢が不透明になるシナリオが想定されるが、これは金融市場ではほとんど想定されていないとみられる。

6:100円を目指し緩やかな円高

 2017年以降、ドル/円は103~115円のレンジで限られた値動きでの推移が続いた。特に2020年は、コロナ不況の到来によって、各国の株式や長期金利が大きくスイングしたが、こうした中でもドル/円の変動率はかなり限定的にとどまった。2010年代初頭までの日本のデフレ期待が和らぎ、FRB(米連邦準備制度理事会)と日本銀行の双方の金融政策が同様に動くという強固な期待が市場で形成され、それがドル/円の「超安定相場」をもたらした。2020年初の110円付近から極めて緩やかに104円台までドル安円高で推移したが、2021年も同様の緩やかなドル安が続くとみられ、100円前後まで緩やかな円高を想定したい。

7:カーボンニュートラルブームで日本企業が変わる?

 菅義偉首相は、2020年10月下旬の所信表明演説において、2050年までのカーボンニュートラルの実現を目指すと表明。また、米国では、バイデン次期米大統領が主催する「気候世界サミット」が2021年4月までに開催され、EU(欧州連合)では「炭素国境調整メカニズム」の具体案が明らかとなり4~6月期中に正式に採択されるなど、脱炭素化の動きが2021年に強まる。

 脱炭素化のためには、次世代蓄電池技術、水素発電技術、CO2回収・貯留によるバイオマス発電など、企業による技術革新が必要になる。国を挙げての技術革新が志向される中、多くの日本企業が新しい技術への投資を積極化させるかもしれない。これが契機となり企業行動が積極化して、消費税率引上げと新型コロナウイルスのダブルパンチで疲弊した日本経済が思わぬ高成長となり得る。可能性は低いが、ポジティブサプライズのシナリオとして頭の片隅にとどめておきたい。