5:仮にマイナー銘柄になったとしても、そのこともまた、価格上昇要因になり得る

(5)はやや長期的な視点であり、2021年という枠を超えた議論ですが、2021年にその前提ができる可能性があるため、今のうちから留意しておいてもよいと考えています。

 近年、減産実施などで原油価格を上昇させると(させようとすると)、原油価格の上昇は、市民にとって増税に等しく、企業にとって原材料の調達コスト上昇の要因になるので受け入れがたい、などと消費国の一部で反発の声が上がることがありました。また、産油国は、自分が採掘した原油を買ってくれる消費国の意向を聞き入れる必要がありました。

 仮に、“脱炭素”が浸透し、消費国でガソリンや軽油などの消費が減少した場合、それらの原料である原油の消費量は減少するとみられますが、このような事態が発生した場合はどうでしょうか。

 人類が秩序ある豊かな生活と経済成長を望む限り、原油の需要はゼロにはなることは考えにくいことを逆手にとり、産油国は、販売する原油の量が減少した分、価格をつり上げる可能性が生じます。

 このような時代では、全体的に原油の消費量が減少しているため、以前に比べて、価格がつり上がることで不平を述べる消費者が減ると考えられます。自動車の燃料が、再生可能エネルギーに変われば変わるほど、市民は原油価格を気にすることはなくなり、やがて原油価格の上昇を増税のようだ、などと言う人はいなくなると考えられます。

 端的に言えば、原油の流通規模の縮小が、生産者側に有利に働き、販売単価が上昇する可能性がある、ということです。これが、筆者が考える、再生可能エネルギーが普及した場合に起き得る原油相場の展開です。

 流通規模の縮小は価格低迷を招くイメージが先行しがちですが、こと原油においては、人類が望む秩序ある豊かな生活と経済成長をもたらしてくれる“石油製品”を提供してくれることから、消費量はゼロになることは考えにくいため、価格は生産者の手によって上振れする可能性があると、みられます。

 投資という側面で言えば、原油価格連動型の金融商品であれば、出来高が減少したり、変動率が高くなったりするものの、産油国の意向が反映されやすくなるため、価格上昇が望みやすくなると考えられます。

 以上、2021年の原油相場について、“5大予測”を述べました。これらの材料が適度に同時進行した場合、2021年のWTI原油先物(期近)価格は、2020年の年初の水準である、1バレルあたり60ドル台で定着すると、筆者は考えています。

 2021年は複数の先進国でリーダーが交代するため、それによって地政学的なリスクが強まる可能性もあります。リスク発生の舞台が中東などの産油国だった場合、供給懸念が強まり、短期的に原油価格が上昇することもあるかもしれません。2021年の原油相場を考える上で、リーダーの交代や、地政学的リスクなどの要素を考慮することは必要だと思います。

 ただ筆者は、2021年は、“脱炭素”をめぐる各国の思惑や政策が、原油相場の新しい変動要因として定着する可能性があると考えています。“脱炭素”元年となる可能性がある2021年だからこそ、原油相場の動向を考える上で、従来の材料よりも新しい材料に重きを置いてみたいと考えています。

[参考]具体的な原油関連の投資商品

国内ETF/ETN

WTI原油上場投資信託 (東証)1690

NF原油インデックス連動型上場(東証)1699

NEXT NOTES 日経TOCOM原油ブル2038

NEXT NOTES 日経TOCOM原油ベア2039

投資信託

UBS原油先物ファンド

外国株

エクソンモービルXOM

シェブロンCVX) 

トタルTOT

コノコフィリップスCOP

BPBP