2:OPECプラスの減産はまだまだ続く。減産を大々的にけん制する人もいなくなった

 OPECプラスは2020年12月現在、23カ国ですが、実際に減産を実施している国(個別の削減量が設定されている国)は、OPEC加盟国のイラン、リビア、ベネズエラの3カ国を除いた20カ国です。以下のグラフは、その20カ国の原油生産量の推移を示しています。

図:OPECプラスのうち減産を実施している20カ国の原油生産量(合計) 単位:百万バレル/日量

出所:EIAのデータより筆者推計

 EIAの統計をもとにした筆者の推計では、OPECプラスで減産を実施している20カ国の11月の原油生産量は合計で日量3,826万バレルでした。この量は、上記のグラフのとおり、減産再開直前(2020年4月)の日量4,636万バレルよりも、協調減産が始まった2017年1月の日量4,351万バレルよりも、大幅に少ない量です。

 今年(2020年)5月の減産再開の際、OPECプラスは自らに、これまでにない大きな規模の削減目標を課しました。そしてそれをほぼ順守していることが、OPECの配下組織であるJMMC(共同閣僚監視委員会)のデータで示されてきました。大規模な削減目標を順守していることが、足元の原油生産量がこの数年間の低水準で推移している理由と言えます。

 また、2021年1月の削減幅について、再開後の協調減産のルールを決めた2020年4月の総会で、12月よりも日量200万バレル少なくする(減産を緩和する)ことで合意していましたが、12月の総会で、少なくする量を日量50万バレルにとどめました。

 削減幅は、1月以降毎月、日量50万バレルの範囲で見直されることとなったため、順次、削減量が縮小する可能性はありますが、それでも、日量200万バレルもの減産緩和が、すぐさま行われることが避けられたことは、市場に一定の安心感を与えたとみられます。

 このようなOPECプラスの動向が、足元の原油相場が上昇している一因になっていると、考えられます。また、4月の総会の合意事項に、現在の協調減産は2022年4月まで続くことが含まれていることも、市場を安心させる材料になっているとみられます。

 このような状況の中、2021年を迎えるわけですが、2021年がOPECプラスにとってどのような年になりそうか、という点を考えてみると、さまざまな点でOPECプラスにとって有利な点が発生すると、筆者は考えています。

 OPECプラスという産油国の集団にとって有利、ということは、彼らが施策を実行するにあたり大きな障害が発生しなかったり、彼らが生産する原油に対し、減少する可能性はあるものの一定程度、消費が維持されたり(消費がゼロにならない)、彼らにとって売り上げの単価にあたる“原油相場”が上昇したりする可能性がある、ということです。

 OPECプラスの施策とは、現在実施している協調減産のことです。現在実施している協調減産は、原則2018年10月を基準に(サウジとロシアは個別に基準がある)、減産を実施するOPEC側10カ国、非OPEC側10カ国それぞれが個別の国ごとに、合意した内容(削減量)に基づき、原油生産量を人為的に減らしています。

 世界の半分以上の生産を担うOPECプラスによる原油の減産は、世界全体の原油の需給バランスを引き締める効果があるため、原油価格を上向かせる要因になり得ます。かつて、協調減産を実施するOPECプラスに対し、減産実施や原油高をけん制した人物がいました。外ならぬ、トランプ氏です。

 トランプ氏は、原油高は“アメリカ市民にとって増税のようなものだ”、と述べ、OPECプラスは協調減産を実施して原油価格をつりあげている、とたびたびけん制しました。

 しかし、2021年1月下旬以降は、トランプ氏は米大統領ではなくなることがほぼ確定しているため、仮に以前のようにOPECプラスをけん制したとしても、同氏の影響力は低下していることから、そのけん制によって産油国の方針や原油相場が大きく動くことはなくなるとみられます。この点が、OPECプラスが施策を実行するにあたり大きな障害が発生しないと考えられる理由です。

 また、コロナ禍の折、世界の石油消費は減少し、今のところまだ回復途上にあることから、世間には、OPECプラスの減産を、“生産量を、減少した消費量に見合うだけの分に調整してくれている”、と好意的に受け止める声もあるようです。消費国側から見た“モノ余りを発生させないようにするための減産”という視点も、OPECプラスが協調減産を実施しやすくしていると筆者は考えています。

 また、後述しますが、“脱炭素”など地球環境への配慮が叫ばれる中であっても2021年の世界全体の原油の消費がゼロにならないとみられる点も、原油の輸出が国益に直結するOPECプラスら産油国には好都合とみられます。

 このような、産油国にとって好条件がそろうとみられる2021年は、産油国寄りの価格になりやすい、すなわち、原油相場が上昇しやすい環境になると、筆者は考えています。