陸:米中関係はどこへ行く?

 11月3日の米大統領選挙を経て、2021年1月にはバイデン米大統領をはじめとする米民主党の新政権が発足します。

 バイデン新政権は、トランプ前政権のような強硬な関税策を採らないとされており、突発的な関係悪化は避けられるという見方が多くなっているため、不透明感は後退していくと思われます。その一方で、米民主党は人権問題や民主主義イデオロギーを重視するスタンスのため、中国の香港やウイグル自治区、そして台湾などへの中国の姿勢に対して圧力をかけることも考えられます。

 したがって、米中の対立構造は2021年も続いていくと思われますが、米中交渉の過程で、現在強まっている中国ハイテク企業への規制や制限が緩和されるかどうか、中国が12月に施行した「輸出管理法」によって中国とのビジネス環境がどこまで悪化するかが焦点になりそうです。

漆:政治イベントラッシュの2021年

 2021年は国内外で政治イベントが相次ぎます。

 日本では、7月22日に東京都議会、9月30日に自民党総裁、10月21日に衆議院がそれぞれ任期満了を迎え、選挙が行われることになりますが、とりわけ注目されるのは衆議院の選挙がいつ行われるのかです。衆議院解散のタイミングとしては、来年の通常国会で予算が成立した後の4月、五輪閉会後の9月、そして任期満了の10月あたりになります。今回の選挙は政権与党のコロナ対策の評価という性格を併せ持つため、政治不安で市場が揺らぐ場面があるかもしれません。

 中国では2021年に中国共産党が結党されて100周年を迎えます。中国では節目の年に合わせて国威発揚に努める傾向があり、例えば米中関係において、米国の圧力に屈するわけにはいかないため、強い姿勢を示すなどの影響が出てくる可能性がある他、経済面で実績を作るために前のめりの政策を実施することも考えられます。

 また、米国では年初の1月5日にいきなりヤマ場がやってきます。ジョージア州で上院議員の決戦投票が行われ、2議席の行方が争われます。現時点での米上院の獲得議席は、民主党が48議席、共和党が50議席とわずかに共和党がリードをしていますが、この決戦投票で共和党が1議席でも確保すれば、大統領と下院は民主党、上院は共和党の「ねじれ議会」の構図が確定します。

 2議席とも民主党が獲得した場合、民主党と共和党の議席が同数となりますが、多数決の際に副大統領(カマラ・ハリス氏)が投票権を持つため、実質的に上院でも民主党が多数派になります。

 民主党が勝利した場合、積極的な政策による財政赤字の拡大や、GAFAMなど米大手IT企業への規制強化などが警戒され、株式市場にとって悪影響となる可能性には注意が必要となります。

捌:社会の分断と格差が不安材料に

 コロナ禍は我々の社会・生活に大きな変化をもたらしました。例えば、コロナの影響を多大に受けた業種・職種とそうでないところとの所得・雇用の格差をはじめ、国内外の株高の恩恵を受けた資産を持つものと持たざるものとの格差などです。米大統領選挙でも「社会の分断」がキーワードとなっていました。

 とりわけ、株高で生じた経済的格差は、金融緩和が助長した面がある他、格差拡大による二極化の進展は中間層の存在が希薄となり、富やマネーがうまく循環せず、経済の潜在成長率を低下させることになり、将来の継続的な成長や社会不安の火種になりかねません。

 先ほど、日経平均3万円の視点を取りあげましたが、まだコロナ禍から脱し切れていない現状でのスピード達成は、実体経済以上に株価だけが上昇していること、そして将来の社会的な不安材料の台頭を意味している可能性があり、もしかしたらあまり喜んでばかりいられないのかもしれません。