参:五輪開催は間に合うか?

 延期された東京五輪は、このままいけば2021年7月23日に開幕を迎えます。

 ワクチンの効果も含め、開催までにどこまでコロナの状況が改善しているかがカギになりますが、現時点では、関係者の開催意思とは裏腹に、開催は難しいのではないかという世論の方が多い印象です。

 2021年3月にIOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長が来日する予定ですので、開催の判断はそのタイミングで行われると思われます。コロナの状況がよほど悪化していない限り、無観客での競技実施や、参加国の規模縮小など、何とか開催に向けて動くことが予想される一方、「感染リスクの高い日本には行きたくない」と言われないようにする必要があります。

 ワクチン期待があるとはいえ、時間的な猶予はあまり残されていません。先ほども触れた通り、足元の日本のコロナ対応がもたついてしまうと、五輪開催に悪影響を及ぼす可能性があります。

肆:金融緩和「出口への意識」の芽生えに注意

 2020年の株高は「大規模かつ継続的な金融緩和」を前提にもたらされています。

 過去の相場の歴史を見ても、金融緩和による過剰流動性相場の場面は多くありますが、相場が行き過ぎた際には、長期金利の上昇や中央銀行による利上げなど「引き締め」が行われて過熱感が冷まされていきます。ただ、今回はコロナ禍による非常事態という「錦の御旗」の元で、緩和政策が長期化するという見方がより株価を押し上げています。

 ワクチン普及とそれに伴う経済の正常化期待は、当面の間は相場を支える材料になりそうですが、ワクチン効果で経済・社会が正常に向かうほど、過剰流動性との両立がしにくくなっていきます。

 実際の経済正常化と金融引き締めはまだ先の話になりますが、最近の相場の特徴にもあるように、ワクチンの普及と効果が想定以上に進むと、引き締めを先取りする格好で株式市場が調整を迎える展開には注意しておく必要がありそうです。

伍:中国は2021年の世界経済のリード役となるか?

 新型コロナウイルスの震源地とされる中国の経済は、徹底した封じ込め作戦と管理によって、経済指標を見る限り、世界でもいち早く回復への軌道に乗せたと言えます。実際に、習近平氏をはじめとする中国指導部は2021年の実質経済成長率の目標を「8%前後」とする方向で調整に入ったとの報道もあります。

 とはいえ、足元の中国経済の強さは、まだコロナ封じ込めの落ち着きの反動によるところが大きく、回復が顕著となっている生産活動、輸出、国内投資に比べると、雇用や所得の戻りはまだ鈍いままとなっています。また、世界的にコロナ禍にあえぐ状況が続けば、輸出に再びブレーキがかかる可能性もあります。

 また、中国は同時に企業の債務問題の処理を手掛けており、社債のデフォルト(債務不履行)も相次いでいます。デフォルトを引き起こした企業の中には、国有企業の他、半導体関連企業や外資系自動車メーカーとの合弁会社なども含まれていて、金融市場の混乱を懸念する声も上がっています。

 確かに、相次ぐデフォルトはネガティブに聞こえますが、その背景にはハイテク業への支援拡大による選択と集中や、いわゆる「ゾンビ企業」の淘汰(とうた)といった構造改革の表れであれば、「コロナ克服」の視点で世界経済の中で一歩先を行く中国は今後も資金を集めやすく、2021年も魅力的な市場のひとつになりそうです。