トランプ逆転勝利の可能性が高いと考えられた瞬間もあった

 事前の支持率調査ではバイデン優勢と伝えられていましたが、蓋をあけてみると、トランプ陣営が予想以上に票を伸ばしていました。トランプ陣営が選挙戦の終盤で猛烈に追い上げ、大票田のフロリダ州で事前予想をくつがえして勝つなど、接戦州で予想以上に票を伸ばしたことが混戦につながりました。

 日本時間で4日午後5時ころ(米国では4日午前3時ころ)、トランプ氏は「勝利は決まったも同然」と、事実上の勝利宣言を出しました。選挙結果が決着していない中で、こうした宣言を出すことに批判が広がりましたが、その時点の集計では、トランプ氏が逆転勝利する可能性が高いと考えられていたのは事実です。その時点では、バイデン陣営に悲壮感が高まっていました。

 集計の最初から、情勢の変化を簡単に振り返ります。開票速報を、世界で最初に織り込んだのが東京市場でした。4日の日経平均は、開票速報をにらみながらの動きとなりました。

日経平均11月4日、日中の動き

 4日午前9時、日経平均は、前営業日より324円高い2万3,619円で寄り付きました。大統領選直前のNYダウが、バイデン勝利で早期決着する見通しから、大幅高(11月2日423ドル高、3日554ドル高)になっていた影響を好感しました。

 日経平均が寄り付いてから、米大統領戦の開票速報が出始めました。集計は、都市部で早く、地方や人口の少ない地域で遅くなる傾向があります。今回も4年前も、大統領選では、都市部で民主党(バイデン陣営)が強く、地方で共和党(トランプ陣営)が強い傾向がはっきり出ています。集計の早い都市部の速報ではバイデン優位と出るので、4日寄付直後には、早期決着への安心感が広がり、日経平均は一時前日比480円高まで上がりました。ところが、4日午前中に、フロリダ州など大票田で、トランプ氏優勢と伝わると、早期決着への期待が低下し、日経平均は伸び悩みました。

 午後に入ってから、都市部の集計が先に進むと、バイデン・リードが続いたため、日経平均は高い水準で推移し、4日は結局、399円高の2万3,695円で引けました。

 ところが、そこから情勢が急転しました。フロリダなど大票田で、トランプ陣営が勝利したことに加え、地方や人口の少ない地域での集計が進むと、トランプ優位に変わってきました。
 日本時間で4日午後5時に、トランプ氏が「勝ったも同然」と事実上の勝利宣言を出したのも、このタイミングです。集計が遅れているのは地方部が多いので、ここからさらに集計が進むと、トランプ陣営の逆転勝利になる可能性が高いと見られました。2016年の大統領選の再来が意識されました。

 ところが、その後、情勢がまた変わりました。郵便投票の集計が進んできたためです。郵便投票では、民主党への投票者が多かったため、再び、民主党がリードを広げました。このまま、郵便投票の集計が進めば、バイデン勝利で決着すると考えられています。ただし、トランプ氏が郵便投票の不正を申し立てて、法定闘争に入ると、決着に時間がかかります。