今日は、大統領選の速報をお届けします。なお、楽天証券経済研究所の客員研究員、加藤嘉一も、ワシントンにて米大統領選を取材して、報告を出しています。そちらもご参考にしてください。以下より、ご覧いただけます。

 11月4日:「現地レポ:米大統領選、高投票率の裏事情。中国はトランプ、バイデンどちらが得?」(加藤嘉一)

米大統領選の開票続く。バイデン優位も、いまだ勝者決まらず

 2020年大統領選は、想像を超えた大接戦となりました。日本時間5日午前6時時点で、まだ勝者が決まっていません。民主党バイデン氏が勝利する可能性が高いと考えられますが、僅差の勝負で、決着はまだついていません。大接戦の州で郵便投票の集計に時間がかかっていることが、決着が遅れている理由です。

 トランプ氏は、「郵便投票は不正の温床」と主張しており、僅差で敗北とされた場合は、郵便投票の不正を申し立てて法廷闘争に臨む構えです。無効票(所定の期限までに届いていない郵便票や、送付方法に違反があった郵便票)を有効票としてカウントしていないか、などを争点とする見込みです。

 コロナ禍の選挙で、郵便投票などで期日前投票をした有権者が1億人を超えているため、郵便投票が勝敗に大きな影響を及ぼします。郵便投票した有権者には民主党支持者が多いので、それをどこまでカウントするかで勝敗が変わる州も出る可能性があります。

 トランプ氏が郵便投票の不正を申し立てて法廷闘争をする場合、大統領が決まるまでに、長い時間を要する可能性があります。そうなると、コロナ対策の財政追加の決定が遅れ、米景気に悪影響が及ぶ可能性が高まります。それこそが、株式市場がもっとも恐れていたシナリオです。

 決着まで長くかかる可能性があるにもかかわらず、4日のNYダウ平均株価・ナスダック総合指数ともに大幅高となりました。その背景を解説しますが、その前に、これまでの集計の経緯を説明します。

トランプ逆転勝利の可能性が高いと考えられた瞬間もあった

 事前の支持率調査ではバイデン優勢と伝えられていましたが、蓋をあけてみると、トランプ陣営が予想以上に票を伸ばしていました。トランプ陣営が選挙戦の終盤で猛烈に追い上げ、大票田のフロリダ州で事前予想をくつがえして勝つなど、接戦州で予想以上に票を伸ばしたことが混戦につながりました。

 日本時間で4日午後5時ころ(米国では4日午前3時ころ)、トランプ氏は「勝利は決まったも同然」と、事実上の勝利宣言を出しました。選挙結果が決着していない中で、こうした宣言を出すことに批判が広がりましたが、その時点の集計では、トランプ氏が逆転勝利する可能性が高いと考えられていたのは事実です。その時点では、バイデン陣営に悲壮感が高まっていました。

 集計の最初から、情勢の変化を簡単に振り返ります。開票速報を、世界で最初に織り込んだのが東京市場でした。4日の日経平均は、開票速報をにらみながらの動きとなりました。

日経平均11月4日、日中の動き

 4日午前9時、日経平均は、前営業日より324円高い2万3,619円で寄り付きました。大統領選直前のNYダウが、バイデン勝利で早期決着する見通しから、大幅高(11月2日423ドル高、3日554ドル高)になっていた影響を好感しました。

 日経平均が寄り付いてから、米大統領戦の開票速報が出始めました。集計は、都市部で早く、地方や人口の少ない地域で遅くなる傾向があります。今回も4年前も、大統領選では、都市部で民主党(バイデン陣営)が強く、地方で共和党(トランプ陣営)が強い傾向がはっきり出ています。集計の早い都市部の速報ではバイデン優位と出るので、4日寄付直後には、早期決着への安心感が広がり、日経平均は一時前日比480円高まで上がりました。ところが、4日午前中に、フロリダ州など大票田で、トランプ氏優勢と伝わると、早期決着への期待が低下し、日経平均は伸び悩みました。

 午後に入ってから、都市部の集計が先に進むと、バイデン・リードが続いたため、日経平均は高い水準で推移し、4日は結局、399円高の2万3,695円で引けました。

 ところが、そこから情勢が急転しました。フロリダなど大票田で、トランプ陣営が勝利したことに加え、地方や人口の少ない地域での集計が進むと、トランプ優位に変わってきました。
 日本時間で4日午後5時に、トランプ氏が「勝ったも同然」と事実上の勝利宣言を出したのも、このタイミングです。集計が遅れているのは地方部が多いので、ここからさらに集計が進むと、トランプ陣営の逆転勝利になる可能性が高いと見られました。2016年の大統領選の再来が意識されました。

 ところが、その後、情勢がまた変わりました。郵便投票の集計が進んできたためです。郵便投票では、民主党への投票者が多かったため、再び、民主党がリードを広げました。このまま、郵便投票の集計が進めば、バイデン勝利で決着すると考えられています。ただし、トランプ氏が郵便投票の不正を申し立てて、法定闘争に入ると、決着に時間がかかります。

4日の米国株が大幅高になった理由

 4日のNYダウは、367ドル高の2万7,847ドルでした。バイデン勝利の早期決着への期待から選挙前に大幅高となった2日(423ドル高)・3日(554ドル高)に続いて、3連騰です。

 米ナスダック総合指数は、さらに大きく上昇しました。4日は430ポイント(3.9%)高の1万1,590ポイントとなりました。NYダウと同じく3連騰ですが、2日(0.42%高)・3日(1.9%高)よりも、上昇率が高くなっています。

 これには、2つ理由があると考えています。

【1】決着に時間がかかっても、バイデン勝利で決まる可能性が高いと考えられている

 勝者がバイデン氏でもトランプ氏でも、大統領選が終わった以上、コロナ対策をやらずに法廷闘争に明け暮れるわけにはいかないと考えられます。いかなる決着にせよ、イベントを通過したことへの安心感が株式市場に広がりました。

【2】上院は共和党が過半数を維持する見込み

 大統領選と同時に行われた議会選も、接戦でした。下院は、民主党が過半数を取る見込みですが、上院は、共和党が僅差で過半数を確保する見通しとなっています。

 当初、バイデン氏が大統領になり、下院も上院も民主党が抑える、完全な民主党支配が実現するとの予想もありました。そうならなかったことを、4日の株式市場は、かえって好感した形となりました。

 民主党が圧勝すると、GAFAなど、大型ハイテクの分割や規制導入の議論が進むと考えられていました。議会で、共和党が一定の勢力を保てば、ハイテク規制を抑制すると考えました。それが、4日のナスダック大幅高につながりました。

 議会で共和党が一定の勢力を保つことで、民主党が主張する法人税引き上げの幅が抑えられるとの期待もあります。

 さらに、民主党が強すぎると、大型の財政出動をやるため、長期金利が上昇すると考えられていました。議会で共和党が一定の力を持てば、それも抑えられるとの思惑から、長期金利が低下しました。長期金利低下が、さらに米国株を押し上げる要因となりました。

 以上が、11月4日の米国株市場の報告です。大統領選はまだ決着していませんし、株式市場の反応も、今後変わる可能性があります。引き続き、本欄で、大統領選について、報告を続けます。

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