昭文社は、電子地図ビジネスで稼ぐことができなかった

 昭文社は、前期(2020年3月期)まで4期連続で営業赤字を計上しています。今期(2021年3月期)も営業赤字となる可能性があります。わずかな黒字か赤字を繰り返す構造不振企業となってしまいました。同社の電子地図は成長せず、出版事業は縮小を続けました。私の判断の何が間違えていたのでしょうか?

(1)電子地図の需要は急拡大しました。ただし、もっとも有望だったカーナビでの採用は、ゼンリンに先を越されました。

(2)シェアは高いままだったと思います。参入障壁もそれなりに高かったはずです。全国に調査員を置いて、地図を修正することも、誰でもができることではありません。

 ところが、昭文社は電子地図で大もうけすることはできませんでした。ネット上で、無料の電子地図がいくらでも利用できる時代になったためです。昭文社は、自らが持つ貴重な電子地図データを囲い込んで大もうけすることなく、安価な価格でネットでの使用を認めてしまいました。そのおかげで、利用者は自由に電子地図を使える恩恵を受けられるようになりましたが、昭文社は利益を拡大することができませんでした。