(5)運用資金は老後までそのままで、老後は定率で少しずつ取り崩す

 老後まで運用を続ける点は、(2)、(3)、(4)よりも遙かにましである。また、ある程度の計画性を持っていることは好ましいし、分配金の大きな投資信託や高配当株のインカムゲインを頼ろうとしない点も考え方として良い。

 ただし、他の運用資産の状況にもよるが、つみたてNISAの資産も一律に取り崩すのだとすると、非課税効果を十分生かせない点で「もったいない」。つみたてNISAに関するアドバイスとしては不完全だ。

 また、老後の資産取り崩しの方法としては、最晩年に必要な資産額と余裕を持って見積もった余命とを元に取り崩し可能額を計算して計画的に取り崩す方がシンプルであると同時に確実だ。

「〇%で運用して、×%で取り崩すと、資産が長持ちする」と称するアドバイスを少なからず見かけるが、将来の運用益を見込んで早目に大きな額を取り崩すと、資産が足りなくなるリスクがあり、不適切だ。「老後」の初期に取崩額が過大になりやすい。老後の資産の取り崩し方として、「定率法」は適切ではない。

つみたてNISAを合理的に考えよう

 つみたてNISAは、投資の初心者も利用しやすい良い制度だが、制度の仕組みをよく考えて合理的に扱わないと「もったいない」。(1)で考えたように、取り崩しの潜在的コストを厳密に計算するのは意外に複雑だが、大まかに言うと、なるべく取り崩さずに最大限長く続けることが適切な場合が多い。

 今回はつみたてNISAが題材だったが、不適切な思い込みに基づく質の悪いアドバイスが世の中にあふれていることにあらためて驚いた。この問題に限らず、ネットや雑誌などの記事を簡単に信じないように注意して欲しい。「果たしてそれは合理的なのか?」、「損得を計算してみるとどうなっているのか?」と疑問を持ちながら記事を読むようにしたい。