選挙は水物。トランプ再選の可能性も。副大統領候補のTV討論は重要

 とは言え、選挙は水物です。直前の支持率統計や、コンセンサスはよく外れます。4年前の大統領選挙の際、トランプ米大統領は、支持率で対抗候補の民主党クリントン氏を下回っていました。ところが、選挙結果は、トランプ大統領の勝利でした。支持率などのアンケートに表れない「隠れトランプ支持者」がいるため、と言われました。また、州ごとの「議席総取り方式」が、トランプ大統領に有利に働いた影響もありました。

 今回の大統領選も、バイデン氏優位とはいえ、僅差の争いと考えられています。コロナの影響で郵便投票が多くなる影響がどう出るかにも、注意が必要です。

 今回の選挙で、急きょ重要性が高まっているのが、10月7日に予定されている、副大統領候補によるTV討論です。共和党のペンス副大統領と、民主党の副大統領候補ハリス上院議員が、TV討論を行います。従来ならば、副大統領候補による討論はあまり重要視されませんが、今回はきわめて重要です。

 トランプ大統領の病状が悪化し、共和党候補から降りる場合は、ペンス副大統領が繰り上がって大統領候補となります。その意味で、ペンス氏の発言に注目が集まります。ペンス氏は対中国強硬路線でトランプ大統領と一枚岩だが、それ以外の政策では大統領ほど強硬論者ではなく、バランスの取れた考えを持っているとの見方もあります。バランス感覚が優れていると見られるか、頼りないと見られるか、TV討論での発言が注目されます。

 民主党の副大統領候補、ハリス氏にも注目が集まっています。女性、非白人ということに加え、バイデン氏以上に弁がたち、民主党の支持を強めるのに貢献しているとの見方があります。バイデン氏が高齢なこともあり、仮にバイデン氏が当選しても、4年後の選挙に出ない可能性もあります。そうなると、ハリス氏が4年後に、女性初の大統領候補を目指すシナリオも出てきます。その意味で、ハリス氏のTV討論での発言にも、注目が集まっています。

 民主党のバイデン候補は、巨大ハイテク企業(GAFAM:グーグル、アマゾンなど)の規制導入に意欲を示しています。このため、バイデン氏優位の見方が広がると、GAFAMなどを中心とした米ナスダック指数が、利益確定に押されました。ただし、ハリス副大統領候補は、巨大ハイテクとつながりがあり、規制には慎重との見方があります。ハリス氏の発言しだいでは、巨大ハイテク規制への不安が少しやわらぐ可能性もあります。10月7日のTV討論から、目が離せません。