「バイデン勝利なら法人増税で株安」は本当か?
法人減税をめぐる政策の違いから、株式市場では「トランプ再選なら株高、バイデン当選なら株安」と考える人が増えています。
トランプ大統領は、大型の法人減税を実施し、大企業に有利な政策を推進しました。これに対し、バイデン候補は、「法人税を引き上げる」と明言しています。選挙戦で、増税を強調するのはタブーですが、バイデン氏は気にせず、トランプ大統領が下げた法人税を引き上げると明言しています。
トランプ大統領が再選すれば、さらなる法人減税が行われる可能性があります。法人減税は、大企業のキャッシュフローを恒常的に改善し、株価にプラス影響を及ぼします。法人税についてだけいえば、トランプ株高、バイデン株安と見られるのは仕方ありません。
ただし、それは、法人税に対する政策の違いだけに注目した、単純な判断です。現実には、両者の間には、もっとたくさんの相違があります。
バイデン氏が法人増税を主張するのは、公共投資や社会福祉にもっとお金を使うためです。インフラ整備の公共投資に積極的な面が注目されれば、バイデン氏の当選でも、株価は下がらないかもしれません。
他にも、バイデン氏の方が、株式市場にフレンドリーと考えられる政策の違いもあります。自由貿易か保護貿易かという視点で見ると、トランプ大統領は保護貿易主義で、TPP(環太平洋経済連携協定)から離脱、対中国で強硬策を前面に出しています。バイデン氏は、自由貿易を重視する姿勢を維持しています。自由貿易を重視する政策の方が、株式市場にとってプラスです。
トランプ大統領が再選したら、対中国の強硬策を一段と強める可能性があります。中国通信大手ファーウェイなどへの制裁を強めるとともに、TikTokやウィーチャットなど中国アプリの使用禁止を強行する可能性があります。また、米中通商交渉で締結した「第一段階の合意」も、中国が約束を守らないことを理由に、反故にする可能性もあります。
バイデン氏が当選しても、米中対立が深まる方向性は変わらないと思いますが、それでも、やり方は異なると思います。あくまでもイメージですが、対中国、対イランで、バイデン氏の方は、やや融和的な政策をとると考えられます。中国もそれがわかっているだけに、バイデン氏当選ならば、少し歩み寄りの姿勢を見せる可能性もあります。
トランプ大統領とバイデン候補の政策の違いは、他にもいろいろあります。トランプ大統領は、環境規制に否定的で、化石燃料にフレンドリーで、パリ協定から離脱しました。バイデン氏は、環境規制に前向きで、自然エネルギー推進に積極的です。バイデン氏勝利ならば、米国のパリ協定復帰が視野に入ります。環境規制については、どちらが株式市場にプラスか、一概には言えませんが、どちらが当選するかによって、米国経済のエネルギー政策のかじ取りに、大きな影響を及ぼします。