選挙本番まで投資家が動きづらい10月

 10月は、このような討論会が毎週行なわれるため、投資家としては動きづらいところです。3回の討論会を終えてトランプ氏が優位となれば、株の買い戻しに弾みがつき、円もクロス円を中心とした円安に動くかもしれませんが、選挙本番の結果を見るまでは一時的な動きかもしれません。

 さらに投資家心理の重しになっているのが追加経済対策の遅れです。民主党は歩み寄りを見せていますが、両党の案はかけ離れており、両候補が激論している中では合意の可能性は低そうです。よっぽど不利な局面になり、その情勢をひっくり返すために歩み寄るというシナリオも考えられますが、支持者に対するリップサービスの域は出ないことが予想されます。

 このような状況を受けて、ゴールドマン・サックスは年内の成立はないとみて、10-12月期のGDP(国内総生産)成長率の予想を6%から3%に引き下げました。

 ただ、マーケットで急浮上しているシナリオがあります。民主党が上下院選でも過半数を占め、完勝するシナリオです。マーケットでは増税を公約している「バイデン大統領=株安」というのが大方の見方ですが、完勝すれば、増税をする一方で、「2兆ドルを超える追加経済対策に加え、バイデン氏が掲げる財政支出計画も上乗せされる」との見方から、全体では2021年後半から2022年にかけてGDPを押し上げるとのシナリオです。ゴールドマン・サックスも共和党の抵抗もあり、規模は縮小となるが、2022年のGDP押し上げ効果をみているようです。

 この3回の討論会で、バイデン氏が健闘し、民主党完勝につながる勢いを得られるのかどうか注目です。

 最近の支持率調査ではバイデン氏が優勢となっていますが、討論会で白黒がはっきりしない場合、米国大統領選は11月3日の翌日には決まらないことが予想されます。今回は郵便投票の割合も高く、開票が遅れるだろうと言われています。また、郵便投票でもめれば、法廷闘争の可能性が高まります。12月14日の選挙人投票の前までに決まればよいのですが、長引くかもしれません。そのことを見越して、トランプ大統領は早々と最高裁判事の後任を指名しました。最高裁の判事9人中、6人を保守が占めることになれば(リベラル派3人)、トランプ大統領にとって有利に働く可能性が高まります。

 最高裁判事の後任人事であるバレット氏の指名は、10月12日から上院司法委員会で指名承認の審議が開始され、10月26日の週に本会議採決の予定ですが、このことも追加経済対策を遅らせる要因になりそうです。進展しないだけでなく、先行期待も高まらないことが予想され、米経済にとってはかなりのマイナス要因になりそうです。

 討論会ではこのテーマについてもどのような討論がされるのか注目です。共和党議員の造反を引き起こすような議論がみられれば、後任指名は遅れ、法廷闘争になった場合にトランプ大統領に有利に働かない可能性が高まります。その場合、10月の討論会が終わっても、投資家が動きづらい状況が年内続くことも予想され、シナリオの一つとして留意しておいたほうがよいかもしれません。ドル/円は、その不透明感からじりじりと円高に動くかもしれません。