古くて残念な常識(2) “OPEC減産で原油価格上昇”

“OPECが減産をすれば原油価格は上昇する”という話があります。OPEC(石油輸出国機構)は世界の4割の原油を供給しているため、そのOPECが原油の供給を人為的に絞る“減産”を実施すれば、原油価格は上昇する、という意味です。

 コモディティ市場の環境が変わる2000年以前の、1982年ごろからOPECは組織全体あるいは加盟国ごとに生産量の上限を決め、生産量を調整するようになりました。それ以後、たびたび、(生産シェア4割を占める)OPECが減産をする、とのアナウンスがあると、原油価格が上昇する場面がみられるようになりました。

 しかし、2017年から始まったOPECと非OPECの協調減産の際、大規模な減産ではあるにも関わらず、原油価格は大きく上昇せず、2018年の後半においては、急落する場面すらみられました。必ずしも、OPECの減産が原油価格を上昇させるわけではない、ことがわかります。

2017年からの原油の減産が行われている最中、シェール革命**により、米国の原油生産量が急激に増加していました。このため、OPECが減産をしても需給が引き締まりにくくなっていました。また、2018年の価格急落は、株価が急落したことを受け、石油の消費減少懸念が急速に高まったことが主因と考えられます。

**シェール革命とは…掘削技術の革新などで、これまで困難とされていたシェール層からの石油や天然ガス(シェールガス)の抽出が容易になったことにより、世界のエネルギー事情が変化。特にシェール層が豊富な米国が資源大国になりうる可能性が高まったため、世界の石油情勢が変化したことなどを指す。

 特に2018年の原油価格急落は、2000年以降に生じたコモディティ市場の環境の変化の際に、株式市場との関わりが強くなったことが影響していると考えられます。米ハイテク企業の株価下落をきっかけに発生した主要株価指数の下落が、株価下落→景気悪化懸念→石油の消費減少懸念という連想が生じさせたと考えられます。

 OPEC減産→原油価格上昇という「思い込み」は、特にコモディティ市場の環境が変わった2000年以降は、原油市場のすべてではなく一部だと認識する必要があります。減産を実施していても、必ずしも、原油価格が上昇するわけではありません。