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「CASE」(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)は自動車業界に100年に1度の大変革をもたらすといわれています。自動車各社は、コロナ禍による自動車販売の減少から大幅な減益や赤字となる中でも、大手は、それら次世代技術などに対する高水準の『研究開発投資』を継続する方向にあります。一方、企業体力で劣る大手企業以外は『研究開発投資』の減額を迫られています。

【ポイント1】次世代技術への投資などから、近年研究開発費が増加

 自動車各社の『研究開発投資』は、近年次世代技術や新興国市場への対応などから増加傾向にあり、この10年で約1.5倍の水準になり、激しい開発競争が続いています。2020年度はコロナ禍で自動車各社は大幅な減益や赤字が予想される中でも、『研究開発投資』は減らせない状況にあり、トヨタ自動車、ホンダなど大手は高水準の投資を維持します。一方中堅企業で投資額を公表している各社は減額の方向にあります。

【ポイント2】大手は高水準の『研究開発投資』を継続

 トヨタは2021年度決算で▲79.2%の営業減益見通しですが、研究開発費は1兆1,000億円で▲0.9%とほぼ横ばいとなる見通しです。同社は米アマゾン・ドット・コムやNTTなどIT(情報技術)大手との連携を相次いで強化しています。従来の新車開発の枠を超え、つながる車を含む「CASE」や次世代交通サービス「MaaS」対応などを強化する方針です。

 ホンダは2021年度決算で▲68.4%の営業減益見通しですが、研究開発費を8,600億円と4.7%増やす見通しです。同社は、初の量産型のEV「ホンダe」を10月30日に国内で発売しますが、自動運転や電動化など次世代技術の開発に注力します。海外では中国IT大手でAI(人工知能)に強い東軟集団(ニューソフト)のグループ会社と合弁会社を設立し、事故時の自動通報など通信サービスの開発を進める方針です。

【今後の展開】次世代技術開発へ向けた総力戦が続く

 コロナ禍でも『研究開発投資』を削減しないのは電動化や自動運転など次世代技術を巡って、苛烈な開発競争が続いているからです。独フォルクスワーゲンの2019年の『研究開発投資』はトヨタを上回っており、グーグルの親会社アルファベットも巨額の投資を行っています。次世代技術の開発は、高水準の『研究開発投資』の継続と、提携など合従連衡による総力戦が続いていくとみられます。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。