米国株急落は「健全な調整」なのか、「相場の変調」なのか

 そして、足元の日経平均が堅調さを維持し、さらに上値をトライしていくためのハードルのひとつとして次に意識されるのは、先週の米国株急落が「健全な調整」なのか、それとも「相場の変調」なのかです。

■(図3)米NYダウ(日足)の動き(2020年9月4日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週のNYダウ平均株価の値動きを振り返ると、コロナ・ショックによる急落時に空けた2月21日(金)~24日(月)の窓を埋めるなど、順調に上値を伸ばしていたのですが、3日(木)に前日比807ドル、翌4日(金)に同159ドル安と大きく下落しました。ただ、日経平均と同様に、節目の2万8,000ドル台を維持している他、25日移動平均線もサポートとして機能しており、下げ幅のインパクトの割にはまだ相場が崩れていないと見ることができます。

 確かに、8月に入ってからの米国株は、企業決算の通過や、抗コロナウイルスのワクチン開発や治療法認可への期待、FRB(米連邦準備制度理事会)によるゼロ金利政策の長期化観測が強まったことなどを背景に株価の上昇が加速してきました。とりわけ、NASDAQやS&P500が連日で史上最高値を更新するなど、過熱感を指摘する声も多く、そろそろ調整局面が来てもおかしくはありませんでした。

 さらに、先週は米雇用統計といった経済指標のほか、NYダウの銘柄入れ替えが実施されたり、アップル株やテスラ株の株式分割の影響があったり、米ネット証券のロビンフッドに対してSEC(米証券取引委員会)が注文処理の開示をめぐって調査に入ったと報じられたり、米ハイテク株の急騰の影にソフトバンクグループの関与が報じられるなど、売りの口実となるきっかけがたくさんありました。

 そのため、今のところは「健全な調整」の範囲と考えることができます。ただし、「相場の変調」となりかねない注意すべき点もあります。