「リスクオンでドル安」への期待

 2021年までは政策による相場サポートが続きそうとの基本観を確認したところで、目先のリスクに焦点を移します。最新の想定は9月警戒、10月底堅さ、11~12月復調です。3月下旬からの金融相場について、5カ月ほど堅調、秋に波乱かという見立てでフォローしてきました。波乱のリスク要因は、経済の重さの再認識、コロナ・ワクチン開発期待の攪乱(かくらん)、米大統領・議会選挙、そして米中対立を指摘しました。このうち米中対立は秋と時期を特定する要因ではないため、他の3要因を時間軸に位置づけて評価します。

1:経済の重さ

 一時停止した経済は、活動再開と空前の政策によって急回復し、金融相場を後押ししています。しかし「レ」字型回復のハネ部分が一巡すると、コロナ前の水準に届かない重さが再認識され、金融相場の勢いを削ぐと警戒しています。

 ただし、株がぐらつけば、不退転の政策サポートは強化されるでしょう。また、コロナ後の経済の「新陳代謝」で、IT(情報技術)、DX(デジタル・トランスフォーメーション)、AI(人工知能)などに代表されるグロース分野が止まる段階ではないでしょう。相場の調整は銘柄選別を呼ぶにしても、金融相場がここで瓦解(がかい)して終わることはないと判断します。

2:コロナ・ワクチン

 ワクチンが臨床試験第3段階を経て、今秋にも承認されるとの期待が高まっています。ぜひ成功して早く普及してほしいと願います。ただし、相場の観点からは警戒すべきことが多々あります。医療系株式への期待が一気に膨らみ、その承認が、織り込み済み反落を招いたり、相場テーマをグロースからバリューにローテーションさせるきっかけになったり、効果・副作用・普及時間に関わる失望を呼んだりする事態です。北半球の秋冬期の新型コロナウイルス感染拡大への警戒もあります。

 もっとも、経済社会はウィズ・コロナへ慣れつつあり、少なくとも死亡者急増にならない限り、市場が過剰反応することはなくなりそうです。

3:米大統領・議会選挙

 11月3日の米大統領選挙は、バイデン民主党候補が優勢との世論調査が報じられていますが、同選挙制度の性格上、勝敗の行方は今も不透明と言わざるを得ません。現職トランプ大統領の勝利なら政策継続で相場に波風は立ちにくく、バイデン民主党候補勝利なら市場に動揺も…というのが、一般的評価です。ただ、バイデン候補も自分が勝って相場下落というリスクを見過ごすことはないでしょう。市場を安堵(あんど)させる政策を発案するとみるのが妥当です。

 意外と見落とされがちなのが、議会選挙の重要性です。議会選挙で民主党優勢という世論調査は、大統領選挙の勝敗予想より確からしさがあります。もし、上下両院と大統領ともに民主党が押さえれば、その大きな政府志向はコロナ禍対応に沿う面があります。トランプ勝利でも民主党が両院を押さえれば、政策対応滞りへの不安が浮上する恐れがあります。