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『金価格』が上昇しています。この7月には2011年9月以来約9年ぶりに史上最高値を更新し、8月に入り1トロイオンス=2,000米ドル台をつけました。年初からの上昇率は30%前後となっています。コロナ禍の経済を支えるため各国が進める大規模緩和を背景に『金価格』が押し上げられています。安全資産として人気が高く、米ドルと逆相関の関係にある金の価格について現状と今後の動向についてみてまいります。

【ポイント1】『金価格』は史上最高値を更新、米実質長期金利低下が追い風

『金価格』はコロナ禍以降、7月には約9年ぶりに史上最高値を更新し、8月には1トロイオンス=2,000米ドル台に上昇しました。年初からの上昇率は31%(8月17日現在)となっています。背景にはコロナ禍による景気先行き懸念からの安全資産への需要の高まり、米ドル安、各国金融緩和による通貨価値の下落やインフレへの懸念などがあげられます。『金価格』は米実質長期金利がマイナス1%前後まで低下したことに伴い大幅に上昇しました。2015~2016年の中国ショック時に、米国の量的緩和縮小によって実質金利が大きく上昇し、『金価格』が大幅に下落した際と極めて対照的な動きとなっています。

【ポイント2】金融緩和とリフレ効果による強力な下支え

 この2カ月で、実質長期金利(名目長期金利-期待インフレ率)は大幅に低下しました。中国をはじめ各国の景気回復の見通しから、インフレ期待はコロナ禍直後の落ち込みから持ち直している一方、名目長期金利は積極的な金融緩和政策の下、主要中央銀行の国債購入が継続するとの見方から低下してきたことが背景です。米実質長期金利低下によるリフレ効果が『金価格』の大幅上昇をけん引してきたと言えます。

【今後の展開】経済回復への期待と警戒の狭間で米実質長期金利の動向に注目

 世界のファンドの資金フローを集計しているEPFRグローバル社のデータによれば、8月6~12日の資金フローは債券ファンドへの堅調な流入が続く中で、金ファンドからは9週ぶりに資金の流出がみられました。足元ではここまで緩やかに低下してきた名目長期金利が反転したことから米実質長期金利に底入れ感が出ています。

 名目長期金利の反転は、米国の追加経済対策やワクチン開発進展などにより経済が正常化に向かうことを期待したものです。ただし、実体経済の回復力は依然として弱く、世界的な低金利が経済の回復基調を維持するために重要な役割を担っており、長期金利の上昇をFRB(米連邦準備制度理事会)がどの程度まで容認するのかが注目されます。米中協議や米国経済対策協議の行方も注目されていますが、先行きへの警戒感と期待感の綱引きとなり、『金価格』は当面不安定な動きが予想されます。