高ベータ値銘柄は上昇相場では大きな利益が期待できるが…

 なお、高ベータ値の銘柄に投資する際は、以下の点に注意が必要です。

 まず、高ベータ値の銘柄は、市場全体が上昇基調にあるときはより大きく上昇しますが、逆に市場全体が下落基調に転じると、より大きく下落します。

 したがって、損切りをしっかり行わないと、投資タイミングによっては買い値を大きく下回り、多額の含み損を抱える結果となりかねません。高ベータ値の銘柄ばかりを信用買いしていると、追い証が発生することも十分に考えられます。損切りを適切なタイミングで行えない方は、高ベータ値の銘柄は避けた方が無難です。

 また、高ベータ値の銘柄の多くは、業績が大きく変動することから、株価も右肩上がりの上昇とはならず、上下に大きく変動します。そのため、長期保有が不向きです。買った後いつまでも保有を続けていると、せっかくの大きな利益を取り逃がしてしまうどころか、その後の下落で含み損に転じてしまう恐れもあります。上昇トレンドで買い、下降トレンドに転じたら売る、というように、株価のトレンドに従った売買を心掛けるようにしましょう。

 

高ベータ値銘柄の事例研究 ケネディクス(4321)

 最後に高ベータ値の銘柄のアベノミクス相場以降の値動きをみて、適切な投資戦略を考えてみることにしましょう。

 ケネディクス(4321)は、アベノミクス相場がスタートした2012年11月時点で、対TOPIXの過去36ヶ月間のベータ値は2.731と非常に高い数値でした。

 このケネディクス株を筆者が以前より実践している「日足ベースでの上昇トレンド転換で買い」というタイミングで新規買いした場合、2012年11月におよそ100円前後(株式分割考慮後。以下同様)で買うことができます。

 その後ケネディクス株は全体相場の上昇とともに、株価指数を大きく上回る上昇率をみせ、2013年4月には849円まで上昇しました。半年足らずで8倍以上の上昇です。

 もちろん、最高値で売り抜けることなどできませんので、日足チャートのトレンドが下降トレンドとなってから売却することになりますが、それでも650円前後で売却できます。半年で投資元本が6倍になったのです。

(2月に日足チャートが一時的に下降トレンドになっていますが、下降トレンド入り直後にヘッジ売り→上昇トレンド復帰直後に買い直しをすれば、2012年11月に買った分は保有を続けることができます)

 一方、上昇トレンド終盤の4月上旬に700円前後で新規買いしたような場合でも、トレンドが下降トレンドに転換した直後に損切りすれば、わずかな損失で逃げることができました。しかし、損切りせずに保有を続けていたとすると、6月下旬には買い値の半値以下である311円まで下落し、特に信用取引の場合は非常に大きなダメージを受けてしまうことになります。

 市場全体が上昇しているときに大きな利益を狙いたい場合はベータ値が高くなる傾向にある銘柄を選択すればよいですし、逆にあまり株価が大きく変動する銘柄に投資したくない場合は、業界トップ銘柄やディフェンシブ銘柄に投資すればよいのです。

 ベータ値を使って、自分自身のリスク許容度に応じて適した銘柄を選択してみてはいかがでしょうか。