ROEとPBR、PERの関係とは?

前回は、ROEの基本的な意味を中心にご説明しました。今回は前回の内容を踏まえ、より実践的な話をしようと思います。

ROEの他に、株価指標として有名なものにPBRやPERがありますね。実は、ROEとPBR、PERとの間には密接な関係があることをご存知でしょうか。

この3つの指標の関係は、次の式で表すことができます。

PBR=PER×ROE

つまり、PERとROEを掛けるとPBRとなるのです。この式から、銘柄選びのヒントを得ることができます。以下でみていきましょう。

ROEを高めると株価が上昇するわけ

一般に、ROEが高い企業の株価は上昇しやすいといわれています。一体なぜROEが高いと株価上昇に結び付くのでしょうか。

その答えは、先ほどのROE、PBR、PERの関係式にあります。

上の式を変形すると、PER=PBR÷ROEとなります。この式から、ROEが高くなるとPERが低くなることがお分かりいただけますでしょうか。PERが低くなれば当然株価の上昇が期待できます。

ROEを高めると株価が上昇しやすい理由は、上の関係式から導き出された「ROE上昇→PER低下→株価上昇」という図式により説明することができるのです。

PBR・PER・ROEの関係から導き出される「お宝銘柄」の見つけ方とは?

また、これらの3つの指標の関係を用いて、各銘柄の株価が割高か割安かを判断することもできます。

「PBR=PER×ROE」ですから、もしPBRの低い銘柄があった場合、その銘柄は「PER×ROE」も低いことになります。

一般的に、PBRの低い銘柄は割安と判断されますが、PBRをROEとPERに分解して考えてみると、より精度の高い銘柄選びが可能となるのです。

例えば、同じPBR0.5倍のA株とB株があったとしましょう。PBR0.5倍といえばかなり株価は割安とされる水準です。

A株のPERは5倍、ROEは10%、B株のPERは50倍、ROEは1%です。

A株は「ROEが高いのにPERが低いためPER×ROEが低い」ので、株価は非常に割安といえます。

逆に、B株は「PERが高いのにROEが低いためPER×ROEが低い」ので、株価が割安とはいえないと判断できます。

普段はA株のような「お宝銘柄」にはあまりお目にかかることはできませんが、株価急落時などにはこうした銘柄が出現することもあります。気になる高ROE銘柄は定期的にチェックしておくとよいでしょう。

また、PBRが高い銘柄も同様の方法でより詳細な検討が可能です。

PBR5倍のC株とD株があったとします。PBR5倍といえば、PBRで判断する限りは一般に割高と判断されます。

C株のPERは250倍、ROEは2%、D株のPERは20倍、ROEは25%です。

C株は「ROEが低いのにPERが高いためPER×ROEが高い」ので株価が割高といえます。

一方、D株は「PERはそこそこだがROEが高いためPER×ROEが高い」のであって、決して株価が割高であるとはいえません。

このように、PBR・PER・ROEを用いて判断すれば、PBRやPER単独で判断するよりも精度の高い銘柄選びができるのです。

ROEと株価に「直接的な」関係はないことに注意

ROEを用いて投資銘柄を選定する際に気を付けたい点があります。それは、「ROEと株価に直接的な関係はない」ということです。

例えば、ROEが10%の銘柄の株価が1,000円なら割安だが2,000円なら割高、といった使い方はできません。

ですから、高ROE銘柄に投資する際は、他の指標(特にPER)に注目して、株価が割高か割安かを判断することが望ましいといえます。高ROEかつ低PERであれば、一般に株価は割安と判断してよいでしょう。

ただ、高ROE銘柄は成長株が多いため、PERをみると割高な状態にあることも少なくありません。筆者であれば、毎期売上や利益の増加が見込める銘柄の場合、PERが割高であっても、株価チャートをみて上昇トレンドであれば新規買いし、下降トレンドに転じたら売却、というようにすることが多いです。

PERは来期の予想利益をもとにして計算されるものですから、2年後、3年後の利益が予想できるのであれば、それらをもとに自分自身で2年後、3年後のPERを試算し、現在の株価と比べて割安かどうか判断する、という方法もあります。

小手先のROE上昇は果たして有効なのか?

ROEは、「当期純利益÷自己資本」で求められます。

このROEを上昇させるにはどうすればよいでしょうか。それは、ROEの計算式を見れば分かります。

1つ目の方法は、分子の当期純利益を上昇させることです。利益が増えればROEも上昇する、これは当たり前といえば当たり前です。

2つ目の方法は、分母の自己資本を減少させることです。利益が増えなくとも、自己資本を減らしさえすれば、ROEは上昇するのです。

企業によっては、この2つ目の方法を使って、ROEを高めようという動きもあるようです。例えば自社株買いを実施すれば自己資本が減少しますのでROEは上昇します。過去には、「資本構成の適正化」として新規にわざわざ借り入れを行って自社株買いの原資にあてた企業もありました。

このような、自己資本の減少によりROEを向上させる方法を、投資家として手放しで歓迎してよいかどうかは疑問が残ります。

高ROEの銘柄であればなんでも株価が上昇する、というのは高ROE銘柄投資がブームの間の一過性のものに過ぎないのではないか、というのが筆者の見立てです。高ROEで、かつ売上や利益もしっかりと伸ばしているような成長性のある銘柄、少なくとも高水準の利益を安定的に稼ぎ出すことのできる銘柄でなければ、株価の持続的な上昇は難しいのではないかと思います。

ですから、単にROEの数値だけに注目して銘柄選びをするのではなく、売上高や利益といった業績面、さらには財務面の安全性も考慮して総合的な判断をすることが求められます。