大規模開発に強みを持つNTTデータ・富士通・NEC

 大規模開発に強みを持つ、NTTデータ・富士通・NECも、好調です。

出所:各社短信

 【1】NTTデータ(9613)
 NTTデータは、SI専業で国内トップです。金融や、官公庁向けで強みを持ちます。M&A巧者で、積極的なM&Aが業績拡大に貢献してきました。海外展開にも積極的です。ただし、大規模開発や海外事業は競合が激しく、時に不採算案件を生じることが、連続増益をはばむ要因となります。

 国内法人向け、官公庁向けは、受注・売上ともに拡大が続いており、好調です。ただし、海外で低採算案件の構造改革を進めたことから、前期(2020年3月期)は営業減益。前々期(2019年3月期)まで3期連続で営業最高益を更新していましたが、最高益が途切れました。

 今期(2021年3月期)も、国内は好調ですが、海外案件がコロナ危機の影響で不透明です。そのため、8月5日時点で、まだ今期の営業利益予想を公表していません。同社は、8月7日に第1四半期(2020年4-6月期)の決算発表を予定しています。コロナ危機が直撃した4-6月も国内は好調が続いている模様ですが、海外が悪化している模様です。足元の状況をしっかり確認する必要があります。

【2】富士通(6702)
 富士通も、NTTデータと同様に、官公庁や大企業の大規模案件に強いSI大手です。ただし、SI専業ではありません。コンピューター・通信機器など、ハードも幅広く展開しています。

 つい先日、富士通が理化学研究所と開発したスーパーコンピューター「富岳(ふがく)」が、計算速度で世界一に輝いたことが分かりました。日本のスーパーコンピューターで計算速度世界一の快挙を成し遂げたのは、2011年の「京(けい)」以来です。「富岳」は、計算速度が速いだけでなく、「京」よりも使いやすさを大幅に改善しており、今後、さまざまな研究開発で使われる見込みです。

 ただ、富士通が利益を稼ぐ中心は、コンピューターなどのハードではありません。同社は、ハードからソフト(ICTサービス)への構造転換に長い年月かけて取り組み、近年、ようやくその成果がはっきり表れてきたところです。連結純利益は2018年3月期に最高益(1,693億円)を達成しました(営業利益は最高益に届かず)。

 富士通は、30年前はハード(PCやメインフレーム、半導体、通信機器など)中心に利益を稼ぐ総合電機大手でした。しかし、ハードで利益をあげにくい時代になる中、ソフト(ICTサービス)中心に成長する企業に生まれ変わるため、過去20年以上かけて、構造改革を行ってきました。

 ハードからソフトへの事業展開にはさまざまな困難が伴い、長い年月を要しました。近年、改革を加速させ、その成果がやっと見えてきました。携帯電話(端末)事業、カーエレ事業(富士通テン)を売却、また、長年の懸案だったPC事業は中国レノボとの合弁会社に移管しました。利益が不安定なハードを縮小し、ICTサービス中心に成長を目指す構造改革は総仕上げに入っています。

【3】日本電気(6701)
 日本電気(NEC)も、富士通と同様、かつてはハードで稼ぐ総合電機でした。ハードで利益を稼げない時代に入り、利益低迷が続いてきましたが、近年、構造改革を経て、ハード・ソフトとも収益力を強化してきました。

 前期(2020年3月期)営業利益は、前々期比2.2倍の1,276億円でした。セグメント別に見ると、社会公共(中央官庁、自治体向け)が自治体向け、医療向けITサービス中心に好調でした。ネットワークサービスも固定ネットワークの増強需要、一部通信会社向けの特需などがあり大幅増益でした。システムプラットフォームはビジネスパソコンの増加に構造改革効果が加わり大幅増益でした。赤字が続いていたグローバルは赤字が縮小しました。一方、エンタープライズ(一般企業向け)は、微増益にとどまりました。

 続く今期(21年3月期)、会社では営業利益を今期比17.5%増の1,500億円と予想しています。社会公共、エンタープライズの伸びとグローバルの黒字転換で営業増益が続く見通しです。

 なお、同社は、6月25日付けでNTTに対する総額644億円の第三者割当、自社株売却と、光半導体とそれを組み込んだ情報通信機器の共同開発を行うための資本業務提携を公表しました。通信向け事業の拡大に寄与することが期待されます。中長期では、AI事業(顔認証システム)、量子アニーリング型量子コンピュータ(2023年に実用化予定)にも注目したいと思います。