ESG、SDGs、米国のパリ協定復帰の可能性。原油相場にのしかかる新たな複数の重石
原油市場には、新型コロナの“終わりの始まり”以外にも、逆風が吹いています。社会から無駄を省き、環境を改善することを是とするESG*やSDGs**などの考え方が浸透しつつあること、そしてトランプ米大統領に代わりバイデン米大統領が誕生した時に起こりうる、米国のパリ協定への復帰です。
*環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の略称
** 「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称
社会から無駄を省き、環境を改善することは、例えば、争い、差別、格差、汚職、犯罪、汚染、時代遅れのルールや枠組み・考え方、必要悪、馴れ合い、行き過ぎたぜいたく、紙、はんこ、過度な残業や通勤などの“無駄”を、国内、国家間、人々の思考、仕事場などの、社会のさまざまな環境から省くことです。
ESGやSDGsが世界にさらに浸透すれば、ますます、社会から無駄が省かれることになるでしょう。その際に、地球から、地球の環境を害する温室効果ガスを省く動きが、ますます加速する可能性があります。
真っ先にやり玉に上がるのが、化石燃料を燃やす行為です。石油製品や石炭をエネルギー源としていた移動(自動車や飛行機)や、発電については、水素や太陽光、原子力などの再生可能なエネルギーに移行することで、その行為を低減させることができます。
これに関連し、現時点で今年11月3日(火)に予定されている米大統領選挙にあたり、バイデン元副大統領・民主党候補は、環境保護を強く訴える、トランプ現大統領と正反対の方針を打ち出しています。
具体的には、パリ協定への復帰です。また、仮に大統領になった場合、主要ポストに石油や石炭などのエネルギー関連企業の要人を用いない、ことも明言しています。パリ協定から離脱したり、政権発足時に米石油メジャー出身の人物を国務長官にしたりした、トランプ大統領と全く異なる方針です。
コロナ禍では、不安定な時期ゆえ、良くも悪くも社会の変革が進みやすくなると考えられます。不安や懸念が高まっている時ほど、社会から無駄でダメなものを排除しようとするムードが強まるためです。(人間が持つ防衛本能が顕在化するイメージです)その意味では、コロナ禍では、社会から無駄を省く動きが加速する可能性があります。
先述のとおりコロナ禍が本当に数十年続くのであれば、向こう数十年にわたり、無駄を省く動きが続く、エネルギーの分野で言えば、向こう数十年にわたり、コロナ前以上のスピードで、石油や石炭を使わない世界を構築する動きが強まる可能性があります。
ただ、バイデン氏が自身のエネルギー政策を示したり、コロナ禍におけるESGやSDGsの議論が出始めたりして、すでに数カ月が経過しようとしていますが、原油相場は、急落していません。40ドル台をはさんだ、小動きのままです。