iDeCoは75歳まで運用で増やす場合、口座管理手数料の問題に注意

 iDeCoはどうでしょうか。同じ法改正のタイミングとはいえ、公的年金とiDeCoはまったく性格が異なります。こちらは終身給付の保証はありません。ただ自分が拠出し、増やしたものを「いつからもらうか」というだけのことです(もしもiDeCoの商品ラインナップに、終身年金保険があれば、それを購入して終身年金額を設定することができますが、設定されたプランは少なく、また現在の低金利環境では相当の長生きをしないと有利にならないでしょう)。

 iDeCoについては、もともと「60~70歳の好きなタイミングで受け取れる」ところに高い自由度がありましたが、これがさらに75歳まで拡大され、かつ「60歳から」はそのままになったことで、老後のお金の管理としては高い自由度を持つことになります。

 あえて60歳代でiDeCoを取り崩して「iDeCoの受け取りと仕事の収入で暮らして、とにかく公的年金の増額を目指す」という選択肢もあれば、「仕事でそこそこ稼ぎ生活できているので、iDeCoは運用を続けつつ、公的年金もiDeCoも受け取りを遅らせる」ということもできます。

 それぞれのライフスタイルに応じて、また公的年金とiDeCoを組み合わせつつ、取り崩しの方針を決められるところに、強みが出てくるでしょう。

60歳以降のiDeCoの口座管理手数料などに注意

 ただし、60歳以降のiDeCoの口座管理手数料について注意が必要です。今回、一部の人について65歳まで拠出可能となりますが、拠出をしない場合でも「運営管理機関の手数料」「信託銀行の資産管理手数料」はかかります。

 これら手数料は、運営管理機関各社の「運用指図者の手数料」という項目で確認できます。掛金拠出をやめると、所得控除の税制優遇が終わってしまうので、税制優遇は運用益の非課税のみになります。そのため、運用状況によっては手数料で目減りする可能性も出てきます。

 また、掛金を拠出した月数だけが退職所得控除枠を増やすことになるので、65歳以降75歳までの10年間は、受け取り時の税制にも影響しません(60歳で受け取った退職金などとも通算される)。