※本記事は2011年7月15日に公開されたものです。

ニューロ・ファイナンス

 ニューロ・エコノミクス(神経経済学)、ニューロ(神経)・ファイナンスと呼ばれる分野がある。それぞれ、経済学やファイナンス(金融論)と脳神経科学の研究を関連づけた研究分野だ。この分野は、2000年を過ぎた頃から、MRI(磁気共鳴画像装置)やfMRI(機能的MRI)の発達で脳の非侵襲的研究が可能になったことに後押しされて活発化してきた。最近、投資に関する論文を読むと、脳の活動領域を示す画像の写真が載っていることが時々ある。

 神経ファイナンス以前には、2002年にダニエル・カーネマンがノーベル経済学賞を受賞したことで有名になった行動ファイナンスという研究分野があった。こちらは、認知心理学の研究とファイナンスの研究を関連づけたものだが、人間(もちろん「投資家」を含む)の各種の「バイアス」(bias:判断の非合理的な歪み)を指摘した。行動ファイナンスは、研究にあたっての数学的負担が軽いこともあってか、近年、日本でもよく紹介されるようになった。

 行動ファイナンスのバイアスは、「人間には、こんな非合理的な判断を下す傾向がある」というだけで、(1)それがなぜ起こるのかと、(2)それは学習等により修正可能なものなのか、という点が明らかでない弱点があった。

 神経ファイナンスは、必ずしもすべてが行動ファイナンスに包摂される研究とは限らないが、脳機能の研究を通じて、これらの点を明らかにしていこうとする点で行動ファイナンスと関連している。