現実には?

 現実のQさんにとってどうすることがベストなのかは、そもそも(1)どのくらいの運用リスクを持ちたいのか、(2)レバレッジはどの程度可能なのか、(3)レバレッジが利用可能な運用商品がある場合その手数料コストはいくらか、(4)ローンの期前返済に必要な手数料コストはいくらか(現実にはこれも重要)、といった複数の要因で複雑に決まる。

 しかも、(1)の望む運用リスクの大きさはあらかじめ固定されたものではなく、追加的に得られるリターンとの関係で決まるので、厳密には、Qさんの効用関数(経済的な選択肢の価値評価を表す関数)を定義して決定しなければならない。

 一見簡単そうな質問だったが、考えてみると、なかなかに複雑だ。

 現実の生活に生かすヒントとしては、(1)借金の返済は有利な運用と同じだという発想が役立つことがある(「借金の不利」の裏返し)、(2)低利のローンあるいは低コストのレバレッジ運用商品があれば人によっては運用を改善できるチャンスがある、ということの2点だろう。

 (2)の視点は運用の解説書などで案外語られることがないが(著者の立場では「借金はするな」と言っておくと「無難」だからだろう)、人的資本が潤沢にあるのに、金融資産が乏しい人や、同様の条件で「積み立て投資は遅い」と思う人は大いに検討するといい。