土地を売るときの相続税が安くなる「広大地(こうだいち)」の規定。しかしこれが適用されるのは今年(平成29年)限りです。来年以降の税制改正を見据え、どのような対策が可能か考えてみたいと思います。

 

税制改正で来年から「広大地」が消える?

 従来から、広大地の適用を受けた場合の土地の減額率は大きすぎる(つまり評価額が低すぎる)、という指摘がありました。

 一方、適用されれば絶大な効果がある半面、その適用要件があいまいなためトラブルも絶えませんでした。この規定にいよいよメスが入ります。

 税制改正により、平成30年から「広大地の評価」の規定が削除される予定です。その代りに設けられるのが「地積規模の大きな宅地の評価」。

 この規定は、主に次のような要件になっています。

・面積500㎡以上(三大都市圏以外は1000㎡以上)
・「普通住宅地区」「普通商業・併用住宅地区」にある土地
・市街化調整区域、工業専用地域以外にある土地
・指定容積率400%未満(東京23区は300%未満)の土地

 これらの要件を詳しく覚える必要はなく、公認会計士・税理士に聞いてもらえばよいですが、従来の「広大地」の規定と比べて要件がかなり明確になっています。これで、従来のような適用要件の可否をめぐるトラブルは減少することが期待できます。

 

従来の「広大地」の規定と新しい「地積規模の大きな宅地」の違いは?

 従来の広大地の規定は、適用要件を満たす限り、土地の形が整っていても形の悪い土地でも同じ評価額となっていました。

 一方、新しい「地積規模の大きな宅地」の規定は、土地の形状が悪ければ、さらなる減額を受けることができるようになっています。

 ただし、同じ土地の面積であっても、「広大地」と「地積規模の大きな宅地」とでは、減額される率が大きく異なります。地積規模の大きな宅地の減額率は、広大地に比べてかなり小さくなってしまっているのです。

 平成30年以降と平成29年までを比べると、よほど形の悪い土地でない限りは、平成30年以降の土地の評価額はかなり上昇してしまうことになりそうです。

 

税制改正を見据えた今年中に実行可能な対策とは?

 ところで、広大地の規定は相続税にかかるものですが、同じ規定が贈与税にも適用されます。相続税も贈与税も、同じ「相続税法」という法律のカテゴリーだからです。

 そのため、贈与しようとする土地が広大地の適用対象となる場合は、広大地としての評価減をした後の低い金額で贈与することになります。

 そこで、広大地の適用を受ける土地を平成29年中に贈与することが、平成30年以降の税制改正による将来の増税を避けるための対策の1つとなります。

  土地の形状などにもよりますが、「広大地」から「地積規模の大きな宅地」に変更されるのに伴い、土地の評価額は20%~30%ほど増額となるものと予想されます。

 でも、今年(平成29年)中に土地を贈与すれば、減額率の高い「広大地」の規定を使うことになりますから、来年以降よりもかなり安い金額で土地を移転させることが可能です。

 

必ず税金の専門家によく相談したうえで実行を

  相続・贈与にからむ税務はかなり専門的かつ複雑で、ミスをした場合の影響額も大きくなります。

 そして広大地に関する規定は、その中でもかなりの難解を極めます。私たち公認会計士・税理士であっても判断に迷うケースが多々あるほどです。

 ですから決してご自身で判断して決定・実行するのではなく、事前に専門家(公認会計士・税理士など)によく相談したうえで実行してください。

 税法の世界では、一度実行してしまうともう後戻りできないことが多々あります。筆者も今まで、公認会計士、税理士への事前の相談なしにご自身で独自に動いてしまった結果、税制面で不利な扱いを受けざるを得なかったケースを数多く見ています。

 土地の相続をする前には必ず専門家に相談してください。税金が減る方法がわかり、スムーズに実行できるようになります。