一線を越えたトランプ米政権

 ドル/円のレンジを下方にブレイクするかもしれない、注目すべきもう一つの動きは、13日のポンペオ米国務長官の発言です。ポンペオ国務長官は「南シナ海のほぼ全域にまたがる海洋権益に対する中国の主張は完全に不法だ」と中国を非難する声明を発表しました。ポンペオ氏は、南シナ海での領有権を巡る中国の主張を否定した2016年7月のオランダ・ハーグの仲裁裁判所の判決に「米国の立場を一致させる」と強調しましたが、米国はこれまでのアジアにおける米国の基本戦略を転換したようです。

 米国は過去70年以上にわたって、アジアの領土主権争いは関係国の間で解決すべき問題だと、米国がいずれかの立場を取ることを回避してきました。しかし、今回の発言によってトランプ政権は米中関係について一線を越えました。

 トランプ大統領は国内問題で支持率が下がってきているため、国外の問題に米国の国力を見せつけようとしているのかもしれません。今回の発言は、米国民の目を国外に向けさせるための第一声かもしれません。

 南シナ海だけでなく、東シナ海、台湾海峡、香港国家安全法に絡む制裁、北朝鮮と、東アジアの各方面で地政学リスクが高まりそうです。中印国境問題もまだ、くすぶっています。11月の米大統領選挙まで4カ月を切ってきたため、8~9月は要注意かもしれません。株もその頃は警戒ですが、株式市場はこれより前に、米国の変化による地政学リスクの高まりを察した動きが出てくる可能性も捨てきれません。