執筆:窪田真之

今日のポイント

・9月後半から外国人買いが増加し、日経平均の上昇をリード。景気・企業業績が好調なので、解散総選挙や北朝鮮などで突発的な悪材料が出なければ、上昇が続く見込み。

・外国人の買いは、ここまでは先物中心。今後、現物買いがどこまでふくらむか、注目。

 

外国人の売買で動く日本株

 9月後半から日経平均株価が急上昇しましたが、上昇をしているのは、いつも通り外国人投資家です。

日経平均と外国人の売買動向(買い越し、または売り越し額、株式現物と日経平均先物の合計):2016年1月4日~2017年10月3日(外国人売買動向は9月22日まで)

注:上のグラフの外国人売買で、棒グラフが上(プラス方向)に伸びているのは買い越し、下(マイナス方向)に伸びているのは売り越しを示す
出所:東証データより楽天証券経済研究所が作成

 

 日本株を動かしているのは、外国人投資家です。外国人は、買うときは上値を追って買い、売るときは下値をたたいて売る傾向があるので、短期的な日経平均の動きは外国人によって決まります。

 2016年は年初から外国人の売りが急増し、日経平均は急落しました。2016年11-12月は、外国人の買いが急増し、日経平均の上昇をリードしました。

 2017年に入ってから、外国人の買いが止まると、日経平均はボックス推移となりました。3月に外国人の売りが増えると、日経平均は一時、ボックスを下へ抜けました。

 ところが、4月後半から、外国人の買いが増加すると、一転して日経平均は上昇。8月後半から外国人が再び売り越すと、日経平均は再び、下へ抜けました。さらに、9月後半から外国人が買い越すと、日経平均は一気に年初来高値を更新したのです。

 このように外国人が日本株を動かす状態が、20年以上続いています。

 

世界景気減速の不安が低下。外国人が日本株を買い戻し

 外国人から見ると、日本株は「世界景気敏感株」で「世界の政治不安敏感株」です。世界景気回復の減速懸念が強まるときや、世界に政治不安が広がるとき、外国人は日本株を売り越す傾向があります。逆に、世界景気の回復が続く期待が高まるときや、世界の政治不安が緩和するとき、外国人は日本株を買い越す傾向があります。

 9月後半から、外国人は、以下の要因から日本株を買ってきたと考えられます。

  • 米景気減速への不安が低下し、ドル金利が上昇、ドル高(円安)が進行
  • 国連安保理で制裁決議が出て北朝鮮包囲網ができつつあることにやや安堵感
  • 日本の景気・企業業績の回復が継続

 

今はまだ、足の速いヘッジファンドが先物を買った段階

 外国人投資家の売買データは、9月22日時点までしか判明していませんが、その範囲で見る限り、日本株の現物ではなく、日経平均先物を買っています。いつも通り、最初は足の速いヘッジファンドが先物中心に動いています。

9月第1~3週の外国人の株式現物・先物の売買動向(買い越し、または売り越し額)、および日経平均の変動幅

注:上の表の外国人売買で、プラスは買い越し、▲は売り越しを示す。先物売買は、日経平均先物だけ集計
出所:東証データより楽天証券経済研究所が作成

 

 外国人の本格的な買いにつながる場合は、その後、外国人の現物の買いが出てきます。9月第4週(25~29日)以降、現物の買いも出ていると推定されますが、現時点では、まだデータが出ていません。

 日本株は外国人次第で動くので、今後も引き続き、外国人売買動向を細かく見ていきたいと思います。

 

短期的な相場予測に賭けるべきではない

 日本株は、PER(株価収益率)、配当利回りから見て割安で、長期投資で資産形成に寄与すると考えています。

 ただし、世界経済や政治に異変が起こると、日本株に外国人売りが増えて、急落することもあります。日本株が、予測しようのない海外の突発事態によって、急落、急騰を繰り返す資産であることはこれからも変わらないでしょう。

 投資と投機は異なります。短期的な相場予測に賭けて投機的ポジションを取るのではなく、堅実な方法で、日本株に長期投資をしていく方が良いでしょう。

 定時定額を買い付ける方法(たとえば毎月1万円)、あるいは、お持ちの金融資産の一定比率を日本株に長期投資するなどの方法で、じっくり投資していくことが望ましいと考えています。