もう一つの悩み「選択制掛金」の場合

 さらにもう一つの問題があります。「うちは会社からはマッチング拠出とは言われてないけれど、自分で企業型DCの掛金額を決められる」という人がいるからです。

 業界では「給与切り出し型DC」、社員への説明では「選択制DC」と呼ばれたりするのがそれです。ただし法律用語ではないので、必ずしもこの言葉を使うとは限りません。

 いわゆる「選択制DC」の場合、事実上「5.5万円の枠を個人が自由に使えるiDeCoと、ほぼ同様の制度」になっています。賃金規程や就業規則をあらかじめ加工しておくことで「自分で給与から出す掛金」を「会社が負担した掛金」と擬態する仕組みです。自分の負担で5.5万円まで給料から掛金を捻出するのが基本となっており、税制的にはiDeCoと同様に掛金が所得控除されます。さらに、社会保険料の算定基礎も下がるので、労使の社会保険料負担も下がります(ただし社会保障からの給付額も減額されるので要注意)。

 こちらは統計がないのですが、最近導入された企業ほど採用割合が高いと言われています。実は法律的にはグレーゾーンの解釈(本来の趣旨とは違う設定をしている)なので、表立って数字に表れることがないのです。

 こちらについては、企業年金のない会社員のiDeCoが月2万3,000円の上限ですが、最大5万5,000円の限度額を自分が自由に使える枠と考えられ、選択制DCを使ったほうがいい、ということになります。運営コストも全額会社負担のことが多いはずです。

 ただし、社会保険料の負担を下げてしまうことが不利に働く要素があります。産休・育休時の給付、失業時の求職者給付、厚生年金額や遺族年金額など、将来に困ったときにもらえるはずの社会保障給付については金額が下がることについては覚悟が必要です。

 会社もきちんと説明をしていないことがあるので、説明書類をよく読み込んでみてください。