中国株の上昇の強さはホンモノか?

 そこで、先週あたまの株価上昇のきっかけとなった中国株について見ていきます。今週も中国では16日(木)に4-6月期GDP(国内総生産)や6月の各種経済指標がまとめてドンと発表される予定のため、注目されることが想定されます。

■(図2)上海総合指数(日足)の動き(2020年7月10日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上海総合指数は7月に入ってから上昇が一気に加速し、6月末の2,984pから7月9日(木)の高値3,456pまで駆け上がっていきました。わずか7営業日で15%以上の上昇率ですので、かなりの急上昇ですし、株価水準についても、コロナ前の高値(2020年1月14日の3,127p)をあっさり超え、2018年2月以来の3,400p台となっています。

 では、中国株の上昇の強さはホンモノかと問われると、いまいちハッキリしません。

 確かに、6月末から7月あたまにかけて発表された製造業PMI(購買担当者景気指数)が改善を示したことが株価上昇の口火を切ったわけですが、その後の上値トライについては、「金融面での規制緩和や改革が進む」とか、「感染再拡大が懸念される海外に比べて中国は抑制のコントロールが効いており、今後も順調に経済が回復する」「香港に上場している中国大手企業の一部が上海への重複上場を計画しており、資金流入が期待できる」「米大統領選を前に米中対立が激化しない」など、その理由づけはさまざまです。

 その中でも可能性が高いとされるのは、中国の機関紙(中国証券報)が株式相場の上昇を歓迎する旨を報じたことです。中国証券報とは、国営通信社である新華通信が発行している証券専門紙で、中国当局の意向が記事に反映されやすい媒体です。つまり、「中国当局が株高を容認、もしくは株高にしようとしている」という意図を読み取った投資家の買いによる面が大きいと思われます。

 いわば、演出された株高と考えることもできるため、足元の中国株の急上昇に対しては、注意が必要かもしれません。中国当局の意向がある以上、簡単に株価が下がるとは思えませんが、中国国内におけるコロナ感染の本当の状況や、大雨被害の拡大懸念、先日成立・施行された「香港国家安全維持法」の影響とそれに伴う米中関係の悪化など、中国を取り巻く環境は良好ではないのも確かです。

 そもそも、上海総合指数が乗せてきた3,400p台は、制裁関税の応酬など米中関係が本格的に悪化する前の水準です。冷静に当時の状況と比べても、足元の株価上昇はかなり違和感があると言えます。もちろん、今週16日(木)の経済指標の発表を受けて日本株が動くことも考えられますが、株価材料としての賞味期限は短いかもしれません。