日経平均は下値目線が強まるも、相場は崩れていない

 先週末7月10日(金)の日経平均は2万2,290円で取引を終え、週足ベースで2週連続の下落となりました。前週末終値(2万2,306円)比では16円安と小幅にとどまっていますが、週間の値幅(高値と安値の差)自体は457円と意外と動きがありました。

 まずは早速、足元の状況から確認していきます。

■(図1)日経平均(日足)の動き(2020年7月10日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週の日経平均ですが、週初の6日(月)に大幅高となりました。中国株上昇の流れに乗った格好ですが、この日の取引で25日移動平均線を上抜け、直近高値(6月23日の2万2,693円)も上回ってきました。また、前回のレポートで指摘していた「三角もちあい」も上放れています。

 このまま上昇に弾みがつくと思いきや、上値の「トレンド・ブレイク」ラインまで距離を残して伸び悩み、25日移動平均線まで押される展開が続き、そして週末の10日(金)に失速していきました。結果的に「25日移動平均線の上抜けで始まり、下抜けで終わった」わけですが、25日移動平均線自体も下方向に傾きつつあります。

 また、10日(金)はオプション・mini先物取引のSQ日でもありました。この日の高値(2万2,563円)はそのSQ値(2万2,601円)に届かず、いわゆる「幻のSQ」です。幻のSQが出ると翌週の相場が弱いと言われていますので、あまり良くないサインです。

 こうして見ると、日経平均は下値目線が強まっている印象ですが、10日(金)の株価が先ほどの三角もちあいの下限の線で踏みとどまっているため、一応、相場はまだ崩れていないと言えます。

 引き続き、この線がサポートとして機能するのであれば、「ペナントボックス」と呼ばれる形が形成される可能性があります。何だかんだでもみ合いの継続や上昇基調への動きが出てくることも考えられ、今週はペナントボックスの維持や値持ちの良さが試されることになりそうです。

中国株の上昇の強さはホンモノか?

 そこで、先週あたまの株価上昇のきっかけとなった中国株について見ていきます。今週も中国では16日(木)に4-6月期GDP(国内総生産)や6月の各種経済指標がまとめてドンと発表される予定のため、注目されることが想定されます。

■(図2)上海総合指数(日足)の動き(2020年7月10日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上海総合指数は7月に入ってから上昇が一気に加速し、6月末の2,984pから7月9日(木)の高値3,456pまで駆け上がっていきました。わずか7営業日で15%以上の上昇率ですので、かなりの急上昇ですし、株価水準についても、コロナ前の高値(2020年1月14日の3,127p)をあっさり超え、2018年2月以来の3,400p台となっています。

 では、中国株の上昇の強さはホンモノかと問われると、いまいちハッキリしません。

 確かに、6月末から7月あたまにかけて発表された製造業PMI(購買担当者景気指数)が改善を示したことが株価上昇の口火を切ったわけですが、その後の上値トライについては、「金融面での規制緩和や改革が進む」とか、「感染再拡大が懸念される海外に比べて中国は抑制のコントロールが効いており、今後も順調に経済が回復する」「香港に上場している中国大手企業の一部が上海への重複上場を計画しており、資金流入が期待できる」「米大統領選を前に米中対立が激化しない」など、その理由づけはさまざまです。

 その中でも可能性が高いとされるのは、中国の機関紙(中国証券報)が株式相場の上昇を歓迎する旨を報じたことです。中国証券報とは、国営通信社である新華通信が発行している証券専門紙で、中国当局の意向が記事に反映されやすい媒体です。つまり、「中国当局が株高を容認、もしくは株高にしようとしている」という意図を読み取った投資家の買いによる面が大きいと思われます。

 いわば、演出された株高と考えることもできるため、足元の中国株の急上昇に対しては、注意が必要かもしれません。中国当局の意向がある以上、簡単に株価が下がるとは思えませんが、中国国内におけるコロナ感染の本当の状況や、大雨被害の拡大懸念、先日成立・施行された「香港国家安全維持法」の影響とそれに伴う米中関係の悪化など、中国を取り巻く環境は良好ではないのも確かです。

 そもそも、上海総合指数が乗せてきた3,400p台は、制裁関税の応酬など米中関係が本格的に悪化する前の水準です。冷静に当時の状況と比べても、足元の株価上昇はかなり違和感があると言えます。もちろん、今週16日(木)の経済指標の発表を受けて日本株が動くことも考えられますが、株価材料としての賞味期限は短いかもしれません。

週足チャートの日経平均は地合いが改善

 ここで話を日本株に戻して、週足の日経平均の状況も確認します。

■(図3)日経平均(週足)とMACDの動き(2020年7月10日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図3は先週も紹介した日経平均の週足チャートとMACDの組み合わせです。

 週足チャートの日経平均では、13週移動平均線が26週移動平均線を上抜けるゴールデン・クロスを達成しており、日柄調整が進む中で地合いが改善しています。

 また、下段のMACDのヒストグラムを見ると、前回も指摘した通り減少傾向が続いています。過去の状況を見ると、ヒストグラムが低下傾向の中でつけた高値が天井になるケースが多く、仮に、足元の株価が高値をトライする動きになった場合には意識しておいた方が良さそうです。

上値重いNYダウ、NASDAQは強い動き

 そして、最後に米株市場についても見ていきます。

■(図4)米NYダウ(日足)の動き(2020年7月10日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週のNYダウ平均株価も200日移動平均線を上抜けきれない展開となりました。

 なかなかアイランド・リバーサル形成時の「窓」埋めゾーンに入れず、上値が重たい展開が続いています。

 その一方で強い動きを見せているのがNASDAQです。

■(図5)米NASDAQ(日足)の動き(2020年7月10日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週のNASDAQは連日で史上最高値を更新しています。最近の米国では複数の州で新型コロナの新規感染者数や死者数が最多を更新するなど、経済の回復スピードの鈍化への警戒感が高まっています。こうした状況を反映してNYダウやS&P500は上昇の勢いが止まっているわけですが、NASDAQは対照的な印象です。25日移動平均線をサポートにしながら、順調に上昇トレンドを描いています。

 それだけ、米大手IT企業を中心に一部の銘柄に資金が集まっていることの証左ですが、逆を言えばNASDAQが崩れると、多くの投資家が痛手を被ることを意味します。今週は米金融大手企業の決算が予定されていますが、これから米企業の決算発表が本格化していきます。弱気な見通しが相次ぎ、25日移動平均線を維持できなくなった場合には、下向きの意識が一気に強まることも考えられるため、米国株の基調変化には目配りする必要もありそうです。