信用買いの含み損がゼロになる前に株価は天井を打つ

 もう1つの「信用評価損益率」は、信用取引の買建て玉がどのくらいの含み損益を抱えているかを示す指標です。東証の「信用取引現在高」のデータをもとに日本経済新聞が発表しているもので、前週末時点の数値が木曜日の日本経済新聞朝刊に掲載されます。

 信用評価損益率は通常マイナス(=含み損の状態)で推移しています。これは、信用取引を行う投資家の多くが、信用取引の建て玉が利益になれば早めに決済してしまう半面、含み損が生じた建て玉は損切りせずに我慢して持ち続けてしまうためです。

 信用評価損益率がゼロに近づけば、株価は一旦の高値をつける傾向にあります。多くの場合は信用評価損益率がマイナス数%にまで改善した時点が株価の高値になっています。

 2013年初めなど相場の勢いが強いときは、まれに信用評価損益率がプラスになることがありますが、それでもプラス数%どまりです。プラス10%とか20%になるようなことはまずありません。

 したがって、信用評価損益率がマイナス1ケタ台前半にまで回復してきたら、持ち株の利食いを本格的に検討すべき局面といえます。

株価の天井は騰落レシオのピークより後に来る?

 経験則上、日経平均株価が目先の高値をつけるのは、騰落レシオが高値をつけてから1~2週間程度後になることが多いです。

 一方、信用評価損益率が高値をつける週と日経平均株価が高値をつける週は一致するケースが多々あります。

 したがって、騰落レシオは株価の先行指標、信用評価損益率は株価の一致指標ということができます。

 騰落レシオが高値をつけたあとにピークアウトしてきたら要注意、信用評価損益率がマイナス数%まで上昇してきたら持ち株の利食いを検討し、少なくともそこからの全力での新規買いは控える、というスタンスを取るのがよいでしょう。

底値圏の見極めにも使える「騰落レシオ」と「信用評価損益率」

 なお、騰落レシオや信用評価損益率は株価が底値圏にあることを見極めるのに使うこともできます。騰落レシオの場合は70%割れ、信用評価損益率はマイナス20%が底打ちの目安となります。

 もちろん、2020年2~3月の株価急落のときのように、騰落レシオが70%を大きく割り込んだり、信用評価損益率がマイナス20%を大きく割り込むなど、「売られすぎ」の局面からさらに売られることもあります。したがって、騰落レシオや信用評価損益率が売られすぎゾーンに達したとしてもすぐに買うのではなく、株価の下げ止まり、反発を確認してから買うようにしましょう。