相場の過熱状態を教えてくれる2つの指標

 株価はいつまでも上がり続けるものではなく、それが目先的なものであれどこかで天井をつけることになります。そして通常、天井は過熱感のピークとともに訪れます。したがって、天井をピンポイントで当てることは不可能としても、株価が天井圏にあるのかどうかを常に観察し、相場の過熱感を自分自身で感じ取る必要があります。そのときよく使われるのが「騰落レシオ」と「信用評価損益率」の2つの指標です。

騰落レシオは130%超えが注意信号

「騰落レシオ」は、東証1部上場銘柄の過去25日間の値上がり銘柄数合計を値下がり銘柄数合計で割った数値で、%表示で表わされます。

 騰落レシオが高くなるということは、値上がり銘柄数が多い、つまり株価が上昇していることを示します。値上がり銘柄数が値下がり銘柄数よりはるかに多い状況、つまり相場が過熱した状態が続けば、騰落レシオはどんどん高くなります。

 一般に、騰落レシオが130%(120%とされることも多いですが、筆者は130%としています)を超えると株価は買われすぎの状態であり、調整間近、といわれます。

 ただ、騰落レシオが130%を超えたらすぐに株価が反落するかといえば、そういうわけではありません。マーケットが強ければ、2013年初めのように、130%を超えた水準で何週間もとどまるようなケースもあります。

 ですから、騰落レシオが130%を超えたからすぐ売り、というわけではなく、相場に過熱感が出てきたという注意信号としてとらえた方がよいでしょう。

 騰落レシオが130%を超えた水準では、利食い優先とし、新規投資はできる限り控えるのが無難です。

信用買いの含み損がゼロになる前に株価は天井を打つ

 もう1つの「信用評価損益率」は、信用取引の買建て玉がどのくらいの含み損益を抱えているかを示す指標です。東証の「信用取引現在高」のデータをもとに日本経済新聞が発表しているもので、前週末時点の数値が木曜日の日本経済新聞朝刊に掲載されます。

 信用評価損益率は通常マイナス(=含み損の状態)で推移しています。これは、信用取引を行う投資家の多くが、信用取引の建て玉が利益になれば早めに決済してしまう半面、含み損が生じた建て玉は損切りせずに我慢して持ち続けてしまうためです。

 信用評価損益率がゼロに近づけば、株価は一旦の高値をつける傾向にあります。多くの場合は信用評価損益率がマイナス数%にまで改善した時点が株価の高値になっています。

 2013年初めなど相場の勢いが強いときは、まれに信用評価損益率がプラスになることがありますが、それでもプラス数%どまりです。プラス10%とか20%になるようなことはまずありません。

 したがって、信用評価損益率がマイナス1ケタ台前半にまで回復してきたら、持ち株の利食いを本格的に検討すべき局面といえます。

株価の天井は騰落レシオのピークより後に来る?

 経験則上、日経平均株価が目先の高値をつけるのは、騰落レシオが高値をつけてから1~2週間程度後になることが多いです。

 一方、信用評価損益率が高値をつける週と日経平均株価が高値をつける週は一致するケースが多々あります。

 したがって、騰落レシオは株価の先行指標、信用評価損益率は株価の一致指標ということができます。

 騰落レシオが高値をつけたあとにピークアウトしてきたら要注意、信用評価損益率がマイナス数%まで上昇してきたら持ち株の利食いを検討し、少なくともそこからの全力での新規買いは控える、というスタンスを取るのがよいでしょう。

底値圏の見極めにも使える「騰落レシオ」と「信用評価損益率」

 なお、騰落レシオや信用評価損益率は株価が底値圏にあることを見極めるのに使うこともできます。騰落レシオの場合は70%割れ、信用評価損益率はマイナス20%が底打ちの目安となります。

 もちろん、2020年2~3月の株価急落のときのように、騰落レシオが70%を大きく割り込んだり、信用評価損益率がマイナス20%を大きく割り込むなど、「売られすぎ」の局面からさらに売られることもあります。したがって、騰落レシオや信用評価損益率が売られすぎゾーンに達したとしてもすぐに買うのではなく、株価の下げ止まり、反発を確認してから買うようにしましょう。