金融緩和と低金利は、まだまだ続く?

 共同声明には、「日本銀行は、上記の物価安定の目標の下、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す。その際、日本銀行は、金融政策の効果波及には相応の時間を要することを踏まえ、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないかどうかを確認していく。」と、記されていて、緩和的な状態が続くことによる弊害があり得ることを意識した文言が盛り込まれています。

 しかし、コロナ・ショック前に低金利で金融機関の収益が圧迫されていたときに政策変更がなかったことからも、緩和からの脱却が難しいことが分かります。

 近年の金融システムレポートなどを読むと、金利収入に頼らず、手数料収入を拡大するよう促していますので、低金利による金融機関経営への影響を理由に政策変更することはないように思えます。

政策変更は早すぎても遅すぎてもダメ

 さて、これまでは日本の財政政策・金融政策の今後を占ってきました。ここで海外に目を向けると、新型コロナウイルス収束後の最大の「かく乱要因」は何と言っても、米国の動向。特に、金融政策については、リーマン・ショックの反省もあって、極めて緩和的な政策をとっています。

 米国の経済成長率から考えれば、米国債10年物の金利が1%を大きく割り込む現在の金利水準は異常と言えます(国債10年物の金利は名目経済成長率を上回ることが多いです)。

 6月に公表された、IMF(国際通貨基金)の「World Economic Outlook Report(世界経済見通し)」の副題は「A Crisis Like No Other, An Uncertain Recovery(他に類を見ない危機、不確実な回復)」。財政状況の悪い新興国も多く、米国の金融政策が正常化する時期・ペース次第では、米国へのキャピタルフライトによる新興国の金融不安定化という事態もあり得ます。

経済と乖離した株価上昇。いつかくる金融緩和の正常化でどうなる?

 その一方、低すぎる金利による弊害もあり、資産価格の高騰が生じやすくなります。既に、IMFは6月25日に公表した「Global Financial Stability Report(国際金融安定性報告書)」で、日米などの株価上昇について、「実体経済と乖離(かいり)して、割高感がある」と指摘しています。

 株価上昇の背景には、金融緩和による流動性の供給や債券の金利が低いこと、また、各国政府による給付金が消費ではなく、貯蓄に回っている部分があることなど、さまざまな要因が考えられますが、理由は何であれ、株価が高過ぎるとすれば調整局面が訪れることになります。

 いずれ来る正常化の局面。遅すぎても早すぎてもリスクが高まる中で、これまで以上に国内外の経済政策を把握する必要があります。