格下げされた日本国債。外資の目は厳しくなる?

 日銀が国債を購入してくれる限り、国債価格は安定するように思えますが、事はそう簡単でもありません。

 現在、プライマリー・ディーラーの約半数が外資系金融機関。外資はとりわけ債券を購入する際の格付けを重視しますので、日本国債の格付けが投機的水準まで格下げされた際には、プライマリーでの購入が難しくなります。

 6月9日には、大手格付け会社のS&Pグローバル・レーティングが日本国債の格付け見通しを下方修正し、A+(安定的)としました。投機的水準であるBB格まではまだ余裕があるものの、国債は金融機関の資産で相応のボリュームを占めますし、金融システム・決済システムにとって、重要な金融商品。その国債が引き下げられると、国内の金融機関の格付けにも悪影響があります。

 信用力が低い金融機関は外貨を調達する際にプレミアムを課せられたり、デリバティブなどの取引に参加できなくなったりと不利益を被ります。こうしたコストの上昇は、一般企業や個人にも転嫁されるので、総じて金融取引が割高になりかねません。

日本政府に迫られる財政再建と経済維持の両立

 政府側も国債の格付け低下リスクを意識して、安倍晋三首相、麻生太郎財務相ともに、プライマリーバランス(国の財政収支)の黒字化目標を直ちに見直すことは考えていない、財政再建スタンスは維持する旨の発言をしています。

 経済が成長して税収が増加することが理想ですが、税率が一定であれば、GDP(国内総生産)が1%増加したときの税収の伸び(税収弾性値)は、1を若干上回る程度。経済成長だけに期待した税収の増加では、コロナ前ですら崩れていた歳出超過の構造を改善することはできません。

 これまでの経緯を踏まえると、そもそもプライマリー・ディーラー制度が導入されたのは、国債の入札不調がきっかけ。金融機関の収益は長らく続く低金利で悪化しているので、今さら、昔の入札制度には戻せません。