5.半導体設備投資の動き

 日本製半導体製造装置販売高は、新年度に入って順調に伸びています。4月の前年比16.4%増に続き、5月も同16.1%増となりました。アメリカ製も同じく17.2%増、13.1%増となりました。2020年暦年の半導体設備投資は、2019年に伸びた先端ロジック半導体向けの堅調が予想されます。それに加えて、2019年10-12月期から回復したNAND向け設備投資が持続し、これまで手控えられていたDRAM向けの設備投資が再開すると予想されます。2020年の半導体製造装置販売高は、日本製、北米製ともに、順調な伸びが続くと思われます。

 7月に入ると、TSMC、インテル、サムスンの2020年12月期2Q(2020年4-6月期)決算が順次発表される予定です。2020年1-3月期、4-6月期の業績と設備投資の実績次第では、2020年12月期通期の設備投資計画が上方修正される可能性があります。その意味でこの3社の決算は、半導体設備投資の先行きを予想する上で注目度の高い決算となると思われます。

 2021年になると、5ナノの増強投資と3ナノの初期投資が出てくる可能性があります。またメモリ投資は、このままデータセンター投資が続き、5Gスマホが本格的に売れ出すならば、2020年以上に活発になると思われます。そのため、2020年に続き2021年も半導体設備投資は順調な伸びが期待できると思われます。

表4 日本製、北米製半導体製造装置の販売高(3カ月移動平均)

単位:日本製は百万円、北米製は百万ドル、%
出所:日本半導体製造装置協会、SEMIより楽天証券作成

表5 大手半導体メーカーの設備投資

出所:各社会社資料、報道より楽天証券作成
注1:2020年12月期はTSMC、インテルは会社計画、サムスンは楽天証券予想。
注2:1ウォン=0.9円、1ウォン=0.0008ドル。

6.注目銘柄

 今回の注目銘柄は、東京エレクトロン、アドバンテスト、レーザーテック、ディスコの4社です。今後6~12カ月間の目標株価は以下の通りです(各社とも前回の目標株価を維持します)。4社とも引き続き投資妙味を感じます。

東京エレクトロン 34,000円
アドバンテスト  8,000円
レーザーテック  13,000円
ディスコ     32,000円

東京エレクトロン

 6月18日付けで東京エレクトロンは2021年3月期業績予想を公表しました。それによれば、今期は前期に続きロジック半導体向け設備投資が堅調で、メモリ向け投資が前下期から回復したNAND向けに続きDRAM向けでも回復する見通しです(詳細は2020年6月26日付け楽天証券投資WEEKLYを参照)。

アドバンテスト

 前工程が実際に東京エレクトロンの予想通りに増強されるならば、半導体生産の増加に伴って、後工程でも今期はSoCテスタ(非メモリ・テスタ)受注高が高水準を維持し、前期からのメモリ・テスタの伸びが続く可能性があります。今1Qのテスタ受注に注目したいと思います(ちなみに、アドバンテストの予想では、今1Qの全社受注高は前4Qから一時的に落ち込むことになります)。

 また、アドバンテストについては、「システムレベルテスト」の伸びも注目点です。2020年3月期のアドバンテストのセグメントの「サービス他」に新規事業であるシステムレベルテストが含まれています。「サービス他」の受注高は2019年3月期307億円から2020年3月期591億円へ、売上高は同じく315億円から425億円へ大きく増えました。増えた要因の一つがシステムレベルテストです。

 このシステムレベルテストは、ロジック、メモリの半導体単品の検査、半導体を基板に組み込んだ完成品の検査に続く、第3の新しいテスト市場であり、複数の半導体の組み合わせ検査を行うものです。スマートフォンなど各種電子機器の内部が複雑を極めるものになってきたため、急成長している分野です。2021年3月期の業績への寄与が期待されます。

ディスコ

 2020年3月は受注が急増しましたが、足元のダイサ(回路を描き込んだシリコンウェハを四角いチップに切り出す)、グラインダ(シリコンウェハの底面を削る)の受注、引き合い動向は思わしくないもようです。経済動向に敏感な台湾、中国などのOSAT(後工程専門業者)からの引き合いに勢いがないようです。ただし、今下期になって先端ロジックだけでなく、メモリ生産動向に今よりも上向きの変化があれば、ダイサ、グラインダの需要にもポジティブな変化が期待できると思われます。

レーザーテック

 レーザーテックの注目点は、8月5日に予定されている2020年6月期決算発表で公表されるであろう2021年6月期会社予想がどのようなものになるのか(業績と受注見通し)と、2020年6月期4Q(2020年4-6月期)の受注実績です(会社予想に対して追加受注があったのかどうか)。受注の勢いと水準が重要なポイントになります。

 また、7月15日に公表される予定のASMLの2020年12月期2Q決算も重要です。EUV露光装置の受注、出荷の動きは、レーザーテックのEUV用マスク欠陥検査装置の受注、出荷見通しに影響を与えると思われます。

 なお、本稿の末尾に2019年の各製造装置の企業ごとの市場シェアを付けました。

 日本の主な半導体関連企業の2020年3月期1Q決算発表予定は以下の通りです。

ディスコ            7月21日(火)
東京エレクトロン           7月28日(火) 
信越化学工業                                     7月28日(火)
SCREENホールディングス             7月29日(水)
アドバンテスト           7月30日(木)
レーザーテック(2020年6月期) 8月5日(水)
SUMCO(2020年12月期2Q)    8月6日(木)

各社業績表

表6 東京エレクトロンの業績

株価 27,930円(2020/7/2)
発行済み株数 155,525千株
時価総額 4,343,813百万円(2020/7/2)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:発行済み株数は自己株式を除いたもの。
注2:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。

表7 アドバンテストの業績

株価 6,200円(2020/7/2)
発行済み株数 198,415千株
時価総額 1,230,173百万円(2020/7/2)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:発行済み株数は自己株式を除いたもの。
注2:当期利益は親会社の所有者に帰属する当期利益。

表8 ディスコの業績

株価 25,610円(2020/7/2)
発行済み株数 35,951千株
時価総額 920,705百万円(2020/7/2)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
注2:発行済み株数は自己株式を除いたもの。

表9 レーザーテックの業績

株価 10,150円(2020/7/2)
発行済み株数 90,178千株
時価総額 915,307百万円(2020/7/2)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:当期純利益は親会社の所有者に帰属する当期純利益。
注2:発行済み株数は自己株式を除いたもの。

表10 半導体製造装置の主要製品市場シェア(2019年)

出所:会社資料、報道、ヒアリングより楽天証券作成。一部楽天証券推定。

本レポートに掲載した銘柄:東京エレクトロン(8035)アドバンテスト(6857)レーザーテック(6920)ディスコ(6146)