3.マイクロン・テクノロジーの2020年8月期3Qを見ると業績は順調に回復中
6月29日付けで公表されたアメリカのメモリ大手、マイクロン・テクノロジー(DRAM、NAND型フラッシュメモリの大手だが、特にDRAMに強い)の2020年8月期3Q(2020年3-5月期)決算を見ると、DRAM、NANDの生産販売も回復に向かっていることが確認できます。
マイクロンの2020年8月期3Qは、売上高54億3,800万ドル(前年比13.6%増)、営業利益8億8,800万ドル(同12.1%減)となりました。前回の半導体ブームが終わった後の下降局面で、DRAM市況が今の水準よりも高かった前3Qに比べると営業減益となりましたが、今2Qと比較すると13.4%増収、営業利益2.0倍となりました。今2Qが業績の大底だったと思われます。
会社側の今4Qガイダンスを見ると、売上高57億5,000万ドル~62億5,000万ドル(前年比18.1~28.3%増)、営業利益10億2,000万ドル~13億3,000万ドル(同56.9~104.6%増)と前年比、今3Q比ともに急速な業績回復が予想されています。スマートフォン向け、HPC向けにDRAM、NANDの出荷順調が期待できるとともに、DRAM、NANDの市況が過去半年から1年の間に底打ち反転してきたことが寄与すると思われます。
今後を展望すると、TSMC、AMD、インテルのスマホ向けチップセット、パソコン向け、サーバー向けCPUが増加しているため、それに付属するDRAMとNANDも増加が予想されます。また、データセンター投資が活発になっていますが、ストレージとしてSSD(NANDを組み合わせた記録媒体)が伸びているもようです。これもNANDの出荷増加につながると思われます。そのため、2021年8月期は好業績が予想されます。
これまで減少してきた設備投資も、業績の拡大に合わせて増加が予想されます。
なお、欧米の主要半導体デバイスメーカー、半導体製造装置メーカーの決算発表スケジュールは以下の通りです(現時点で決算発表日が判明しているもののみ)。
ASML 7月15日(水)
TSMC 7月16日(木)
インテル 7月23日(木)
アドバンスト・マイクロ・デバイシス(AMD) 7月28日(火)
ラムリサーチ(2020年6月期) 7月29日(水)
アプライド・マテリアルズ(2020年10月期3Q) 8月13日(木)
表3 マイクロン・テクノロジーの業績
グラフ3 マイクロン・テクノロジーの売上高と営業利益
グラフ4 マイクロン・テクノロジーの設備投資:四半期ベース
4.メモリ大口価格は堅調な動きが続く
DRAM、NANDの大口価格は横ばいが続いています。DRAMは、今年3月上旬に大底入れし、上昇に転じた後横ばいになりました。NANDは昨年8月に大底入れした後上昇に転じましたが、小幅上昇した後これも横ばいになっています。5Gスマホ、高性能パソコン、高性能サーバー向けにメモリ需要は増えていますが、メモリ向け設備投資がNAND向けから増加しているため生産数量も増えており、市況は横ばいです。
また、DRAMのスポット価格は、今年3月が直近のピークとなってその後下落しています。新型コロナウイルス禍の影響でスマホ市場全体が盛り上がらないことを反映していると思われます。ただし、これまで見てきたように、ロジック、メモリ合わせて先端半導体の需要のけん引役が、5Gスマホから高性能パソコン、高性能サーバーへと広がっています。この3分野の需要増加がDRAMスポット価格が近い将来上昇に転じ、更にDRAM、NANDの大口価格が上昇に転じる要因になるかもしれません。引き続きメモリ市況に注目したいと思います。
グラフ5 NAND型フラッシュメモリの市況(2017年5月29日から)
グラフ6 DRAMの市況
グラフ7 DRAMのスポット市況