“ずれ”の拡大が、不安の根源。今後は2,000ドルに到達?

 6月19日(金)、米金融大手は、金価格の見通しの水準を引き上げ、1年後には2,000ドルに達するとしました。水準引き上げの理由は、不安拡大に伴う先進国の投資拡大、とのことです。以下のとおり、NYの金先物価格が2,000ドルをつければ、史上最高値です。

図:国内外の金価格の推移

出所:各種情報源より筆者作成

 この種の報道で言われている、米国の金融緩和策が来年末まで続く(代替通貨の側面で買われる動機が続く)点以外の、“パンデミック”“コロナ拡大”などの“不安心理の拡大”については、やや補足が必要であると感じています。

 筆者は“不安心理の拡大”について“ずれ”というキーワードを使う事で、整理をすることができると、考えています。“ずれ”が拡大することで、不安が増し、それが金価格を今後さらに押し上げる要因になると、考えています。

◎世界で発生・拡大しているずれ

・国家間のずれ
  ロックダウンをして第1波を乗り越えた国と、ロックダウンできない国のずれ
  医療体制が整っている国と、整っていない国のずれ
・人種間のずれ
  米国で発生した黒人殺害事件を機に顕在化した人種間のずれ
・再選をめざすリーダーと一般人の感覚のずれ
  再選に意欲を見せるリーダーと、さらなるコロナ対策を求める一般人のずれ
・一般人における感覚のずれ
  新しい生活様式に積極的な人と、そうでない人のずれ
・経済情勢におけるずれ
  実態以上に上昇している可能性がある株価と、実態を示す経済指標のずれ
・中央銀行におけるずれ
  政治と独立した立場である中央銀行が、“財政ファイナンス”との指摘のとおり、
  事実上、国の債務を肩代わりしている。中央銀行の本来の役割と実態のずれ

 ずれの存在は、不一致(不平等、格差、ゆがみ)の存在を意味します。現在は、世界のいたるところで、何種類もの不一致が存在し、そして拡大しているわけです。不一致の同時発生・拡大は、世界に垂れ込める不安心理を、じわりと重くします。

 中央銀行の金保有、欧米の金融当局による大規模な金融緩和(代替通貨としての金需要)以外に、このような不安拡大(資金の逃避先としての金需要)が続くことは、金相場にとって、価格の上昇要因において“多層化が続く”ことを意味します。

 ずれを元に戻す、あるいは、ずれによって生じた隙間を埋める、強力な材料が出てくるまでは、不安心理の拡大が続き、金価格が2,000ドルに達する可能性が高い状態が続くと、考えます。