現代の金相場では“材料の多層化”が起きている

 例えば、ある夜、金価格が下落したとして、同時に、株高/ドル高が起き、米国で新型コロナウイルスの感染拡大を伝えるニュースが発表されたとします。

 金にとって、株高は“代替資産”の面で下落要因、ドル高は“代替通貨”の面で下落要因、新型コロナウイルス感染拡大による“有事のムード”の面で上昇要因、差し引きすると、下落、という具合です。

 “代替資産”だけ、“代替通貨”だけ、“有事のムード”だけが、金相場を動かしているわけではありません。複数の材料が一度に金相場に作用しているのです。

 複数の材料とは、以下の5つです。

(1)有事のムード [短・中期]
(2)代替資産 [短・中期]
(3)代替通貨 [短・中期]
(4)中印の宝飾需要 [短・中・長期]
(5)中央銀行 [長期]

 現代の金相場は、少なくとも5つの材料“層”になっており、時には有事のムードが、時には代替資産が、また時には代替通貨が、あるいはその中の複数が、相殺し合い、その結果、1つの金価格が決まっていると、言えます。

 この点は、金相場の今後を考える上で、非常に重要です。金には1つしか材料がない、金は1つの材料で動いている、という考え方では、仮に数時間前の値動きを説明できたとしても、数カ月・数年先の値動きを展望することは不可能です。

 一見複雑そうに見える“多層化”の考え方ですが、この考え方は、“コロナ第2波”が金価格の動向にどのような影響を与えるのか? を考える上で、有用です。