投資小説:もう投資なんてしない⇒

第5章 分散投資は、個人投資家を堕落させるか、成功させるか

<第4話>積み立て投資なら、ショック相場を歓迎できる?

 先生は、ひとしきり隆一が投資や経済の基本をとらえたと考え、具体的な実践方法を伝えることにした。
「資本主義、バブル、行動心理といった、長期投資に必要な体系的な考えが身についた後は、投資を習慣化、仕組み化する必要があります」
「投資の習慣化、ですか」

「そう、習慣になっているほど強いものはありません。野球選手のイチローは毎打席同じルーティンで打席に入ることで有名ですよね。投資もルーティンにすることが必要で、その一番いい方法が、毎月の積み立て投資です」

「積み立て投資ですか?」
 隆一は、積み立て投資という言葉は聞いたことがあったが、詳しくは知らなかった。

収入ギリギリまで使ってしまう…そんな人が継続投資をできる?

「そうです、長期的な資産形成には、積み立て投資が有効です。積み立て投資がどういう仕組みかと言えば、証券会社や銀行の口座から毎月一定の金額を天引きし、そのお金で金融商品を買い付ける仕組みです。投資信託の積み立てもあります。まず、この天引きというのが、絶対条件になります」と先生はそこを強調します。

「先生、わかります。銀行の普通口座に現金があると、どうしても使いたくなって、つい無駄なものを買ってしまいます。そこをきっちり、切り分けるんですね」
「そうです、人間の意志というのはかくも弱いもの。<パーキンソンの法則>というものがあるのですが、これは“支出の額は、収入ギリギリまで膨張する”というものです」
「はは、あんまり笑えないですが、ギリギリを超えちゃうこともありますね」

「そうですね、そういう方も少なくないですね。心のブレーキなんていうものを信じてはいけないのかもしれません。だからこそ、天引きのような強制力が必要なんです。さらに、積み立て投資のいいところは、下がったときの方がメリットが発揮されるということです」
「先生、下がったほうがいいというのは、どういうことですか。株価が下がって儲かるというのがピンと来ません」

「確かに言葉だけだと、違和感があるでしょうね。それでは、具体的に過去の事例を使って説明をしていきます。たとえば、2004~2014年の期間を取って考えたいと思います」

「どうして、その10年間を使うんですか」
 隆一は、ある期間に区切るということに、どことなく説得する人の都合のよい期間になるようで、気持ちが悪く感じていた。