平均労働賃金は伸びているか?

 すると、今回も注目は、平均労働賃金の伸び具合ということになります。イエレン議長を悩ませているのは、「雇用がタイトになっているのに、賃金が上がらない」こと。しかし、この問題は米国に限ったことではなく、日銀をはじめ世界の主要中央銀行が解くことができずにいる「エニグマ」です。

 

 とはいえ、労働賃金が上がらなければ、FRBが利上げしないのかというと、そんなことはありません。今回の雇用統計の結果がどうであれ、米国が12月に利上げすることは、ほぼ確実と見られています。

 

今後の米国の利上げは、雇用統計次第

 イエレン議長は利上げの理由として、「低金利を長期間継続することには副作用がある」ため、「インフレが2%に達するまで金利を据え置くのは賢明ではない」ことを掲げています。ただ、同時に、「米国の雇用市場の強さが、近い将来インフレを目標値まで押し上げるだろう」と述べています。

 

 インフレはすぐに追いつくから、先に利上げしても問題ない、というのがイエレン議長の主張と考えることができます。ということは、平均労働賃金の上昇を含めて、雇用市場が強さを維持することが、FOMCが利上げを継続するための前提条件だといえます。

 

 労働市場がハリケーン被害からの回復に手間取ったり、あるいはこのまま力を失くしたりした場合、FOMCの来年以降の利上げ見通しが後退する可能性が大きくなります。日米金利差を前提とした、ドル高/円安トレンドにも影響が出ることになるでしょう。

 

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