コロナ禍でESGが浸透し、銀を取り巻く常識が変わりつつある
銀の価格推移に関し、以下のように述べられることがありますが、近い将来、これらが銀価格の傾向を示すものとして、そぐわなくなる可能性があると、筆者は考えています。コロナ禍がきっかけでESGの考え方が本格的に浸透し、太陽光発電向けの需要拡大が、今後も、長期的に増加する可能性があるためです。
- 少数の誰かが買い占めると、価格が急騰することがある。(ハント兄弟の買い占め騒動のような事象)→太陽光発電向けの需要が拡大すれば、銀市場は社会的により重要なインフラとなり、これまでのような“投機の場”、という色合いは薄くなる可能性がある。
- 写真フィルムの感光材向け需要が、デジタルカメラとスマートフォンの急速な普及によって急減して価格が上昇しなくなった。→先述の図のとおり、写真フィルム用の需要は減少しているが、太陽光発電向けのように増加している需要もある。減少ばかりではない。
- 歴史的に通貨の側面を持つため、価格の推移が、同じく通貨の側面を持つ金(ゴールド)と似ている。ESG、太陽光発電、というこれまであまり目立たなかったテーマが、コロナ禍で目立つようになってきた。これまでと異なる市場環境になってきているため、過去の値動きの傾向を、これまでも同じように当てはめることが難しくなると考えられる。
銀が持つESGとの接点の強さは、金や、プラチナ、パラジウムは、おそらく持ち合わせていないと思います。他の貴金属にない、社会が是とする接点だからこそ、銀の魅力が際立つわけです。
銀を長期投資の対象と考える際、銀が、強くて長期的な時間軸の独自材料を持っていることを認識することは、重要だと思います。
過去の急騰急落に目が行きがちになりますが、そうではなく、コロナ禍、ESG、太陽光発電などの、長期的な視点に立ったキーワードを意識することが重要であると、筆者は考えています。
図:NY銀先物価格(中心限月、月足、終値) 単位:ドル/トロイオンス