本日の注目通貨

ユーロ/円:ECBがユーロ売り戻しに利用される?

 5月末に楽天証券が投資家を対象に実施した相場アンケート調査によると、回答頂いた5,054人のうち、約35%(1,761人)が、5月のユーロ/円は「ユーロ安/円高に動く」と考えていることがわかりました。一方で「ユーロ高/円安に動く」は最も少ない約17%(865人)でした。「動かない(わからない)」は、約48%(2,428人)。ところが、ユーロ/円は投資家の予想を完全に裏切る大上昇となっています。

 ユーロ/円は5月初めに2016年11月以来の安値となる114.40円まで下げたのですが、そこからわずか1カ月で8円も上昇しています。当時ユーロ/円が下落した理由は、ドイツ憲法裁判所ECBの金融政策の一部に対して「違憲」判断を下したこと。欧州経済を救うために戦う「正義の味方」ECBの足を引っ張る「悪者」ドイツに怒った投資家がユーロを売りました。

「欧州オワッタ」はずだったところに、フランスとドイツが5,000億ユーロ(約58兆円)にのぼる欧州復興基金の創設を提案。この超大型の景気刺激策がユーロの流れを180度変えることになりました。

 そして今日は6月ECB理事会が行われます。マーケットが注目しているのは、ECBが3月に開始した7,500億ユーロ(約91兆円)規模のPEPP(パンデミック緊急購入プログラム)をさらに増額するかどうか、ということ。ECBはまだ購入額を使い切っていないのですが、あえて増額することで、ドイツ憲法裁判所に喧嘩を売るのではないかという期待があります。

 しかし、マーケットはPEPP増額を前提に進んでいるため、期待通りの結果が得られなければ失望へと急変することも。また、欧州復興基金を巡っては、ヨーロッパのけちんぼう四人組ことオーストリア、オランダ、スウェーデンそしてデンマークが反対を表明していて、すんなり設立できるかが不透明になっています。

 ユーロ/円は5月25日から8営業日続伸。一気にここまで上昇しているだけに、ECB会合が利食い(ユーロ売り)のタイミングになる可能性があります。

出所:MarketSpeed FXより、楽天証券作成
出所:MarketSpeed FXより、楽天証券作成