どの時間軸の相場に乗るか

 コロナ禍の下、「相場の歴史的急落は人生で数少ない買い場」と申し上げてきました。経済回復のU字軌道の底の深さと長さが読めない不確実性はあっても、治療薬・ワクチンの開発普及へ2~3年との想定に基づけば、3割前後値を下げた株式を時間分散でバリュー投資していくことが妥当と判断しました。

 この時、株式相場の今後について、2020年3月下旬~4月は政策期待で堅調、5月は経済悪化を実際に確認しつつ調整反落、6~8月経済再開で堅調、9~12月に経済回復の重さ、米大統領選、秋冬の感染再燃への警戒が重なって反落リスク、さらに2021年には上値は債務とデフレの圧迫、下値は政策サポートに挟まれながら、治療薬・ワクチンの開発普及を待つ、という展開イメージでした。この基本観は今も変わりません。

 上述の想定のうち「5月の売り」は時間調整程度でした。まだ6月前半の反落の可能性を排除していませんが、押し目買い派の動きがさらに強まるでしょう。そのままサマーラリーになり、9~10月頃に速い相場と遅い経済のギャップを警戒するシナリオです。

 3月以降の購入株式をサマーラリーでいったん利食い売りする短期投資にも一理あります。ただし中長期投資家であれば、長期で花開くバリュー投資の根ポジションとなりうることを考える必要があります。中期的に相場がもたつく場合も、バリュー投資の積み増しの機会が長引いたと前向きに考えたいところです。相場の堅調がこのまま持続するなら、それはそれで喜ばしいこと。どちらにしても時間分散のポジション構築には好機が続くでしょう。

 以上の想定イメージは、筆者が相場観察の視座を定める軸として設定するものです。時間の経過と共に新たな事情を盛り込み、軌道の微調整を続けていくアプローチです。その中でリスク・シナリオとして以下の2つを特に意識しています。

 第1は、多くの人が納得しやすいシナリオは前倒しで市場に織り込まれ、現実の相場に短期かく乱をもたらし得ること。4月堅調、5月調整、6~8月ラリー、9~12月リスクの想定に、多くの方から賛同が得られるほど、この短期かく乱リスクを警戒してきました。

 第2は、治療薬・ワクチンが想定より早く開発されると、中期デフレ圧迫シナリオの時間軸がぐっと短縮され得ることです。相場はこのポジティブ・サプライズへの備えとして、買い急いでいる感があります。私は一貫して「慎重ながらもポジティブ」に臨み、バリュー投資からモメンタム投資へ切り替える機会を逃さないよう目をこらしています。